東日本大震災に伴う死者・行方不明者の特徴(速報)
これまでにブログ等に挙げた文書を整理して,「東日本大震災に伴う死者・行方不明者の特徴(速報)」にまとめました.東北大学災害制御研究センター津波工学研究室が刊行している紀要的刊行物である「津波工学研究報告」に投稿した原稿です.
「東日本大震災に伴う死者・行方不明者の特徴(速報)」
http://disaster-i.net/disaster/20110311/20110621.pdf
以下に,「終わりに」の内容を挙げておきます.
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6月上旬現在で公表されている資料を元に,東日本大震災に伴う死者・行方不明者の特徴について概観した.主な結果を整理すると以下の通りである.
- 6月6日現在の警察庁資料によれば,死者15373名,行方不明者8198名,計23571名.発表された値は,4月中旬がピークで,最大値より5000名以上減少し,6月上旬現在1日数十人規模で減少している.
- 身元判明死者の一覧表を元に年代構成を集計すると,全人口と比較し60代以上の構成比が高く,50代以下で低い.全犠牲者の63.1%が60歳以上で高齢者に偏在している.阪神・淡路大震災時の同58.3%よりやや高く,2004~2010年の日本の豪雨災害による犠牲者の同65%に近い,阪神・淡路大震災時に見られた20代の構成比がやや高い現象は確認できない.
- 岩手,宮城,福島の3県の犠牲者が,全犠牲者の99.7%を占める.また,この3県の沿岸37市町村の犠牲者が全犠牲者の99.3%を占め,犠牲者のほとんどが津波に起因していることが示唆される.
- 阪神・淡路大震災時の神戸市では人口に対する犠牲者の比が0.31%だったが,東日本大震災では,沿岸37市町村中24市町村で0.31%を超え,最大は岩手県大槌町の10.46%だった.
- 津波浸水域の人口に対する犠牲者数の割合は,最大が岩手県大槌町の14.50%で,岩手県陸前高田市,宮城県女川町で10%を超えた.これは近年の日本の災害と比較して非常に高い比率だが,浸水域に居住していた人の少なくとも8割程度は何らかの形で難を逃れ,生き残ったとも読み取れる.明治三陸津波時には,町村の人口に対する犠牲者の割合2~5割に達しているケースも少なくなかったことを考えると,これまでの各種防災対策に何らかの効果があった可能性が示唆され,今後さらに検証が必要である.
- 岩手,宮城,福島以外での死者・行方不明者は70名で,原因別では4割が津波,2割が倒壊だった.ただし住家の倒壊による犠牲者は確認できない.遭難場所は自宅付近以外が6割だが,いわゆる外来者が被害の多くを占めるような状況ではなかった.
- 岩手,宮城,福島以外での津波犠牲者のうちわけでは,何らかの避難行動をとっているものが多かったが,避難後に危険地域に戻って遭難したケースも見られた.
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