7/28-30の新潟,福島での豪雨は,その豪雨域が平成16年新潟・福島豪雨とよく似ていることから,気象台などから出される情報の中でも,またメディアでも両者が比較されて伝えられています.
私自身でもごく簡単にこの2事例を比較してみました.以下,平成16年新潟・福島豪雨を「2004年豪雨」,今回の事例を「2011年豪雨」と言います.
2004年豪雨で,気象庁AMeDAS観測所の中で最大の降水量の記録状況は私の集計だと下記です.
1時間降水量 58mm(新潟県栃尾)
24時間降水量 422mm(新潟県栃尾)
48時間降水量 431mm(新潟県栃尾)
2011年豪雨では今のところ下記.
1時間降水量 112mm(新潟県十日町)
24時間降水量 527mm(福島県只見)
48時間降水量 644mm(福島県只見)
短時間降水量,長時間降水量のいずれの面から見ても,2011年豪雨の方が規模が大きかったと言えます.
豪雨の範囲をざっくりと見るために,AMeDAS観測所で,観測開始以降の最大値(統計期間20年以上)を更新した観測所数を集計してみます.
2004年豪雨
1時間降水量 3箇所
24時間降水量 10箇所
48時間降水量 8箇所
2011年豪雨
1時間降水量 9箇所
24時間降水量 7箇所
48時間降水量 19箇所
2004年にそれなりの豪雨が発生しているので,「最大値更新」をこの地域ではしにくくなっている面もあり,やや比較しにくいのですが,それでも,2011年豪雨の方が広い範囲で豪雨があったと言っても良さそうです.
48時間降水量の更新箇所が24時間より多かったことも注目されます.2004年豪雨では,降水継続時間がほぼ24時間以内で,24時間降水量と48時間降水量がほとんど変わりませんでした.しかし今回は,24時間,48時間,ここでは示しませんが72時間がそれぞれかなり値が異なっており,豪雨の継続時間が長かったことが伺えます.
雨は,総量が多くてもゆっくりと降れば影響が小さくなる面もありますが,2011年豪雨についてはまだ被害の概要が出てきていませんので,このあたりは今のところ論評を避けます.
ただ,降水量の記録面から見ると,2011年豪雨は2004年豪雨よりも激しいものであったと言って良いだろうと私は考えます.2004年豪雨はこの地域としては最近30年間で最大規模,過去100年間でもそれに近い豪雨事例だったと考えますので,2011年豪雨も同様な評価ができると思います.
なお,これはあくまでも「新潟県中越地方付近の豪雨としては」の話です.全国AMeDAS観測所の1979年以降の全データで見れば,今回の只見の24時間527mmは上位30位に入りません.
気象庁以外の観測所では新潟県三条市の笠堀ダムで27日21時~30日12時の累加雨量959mmなどの記録もあります.気象庁AMeDASは,山の中など,雨のよく降りやすいところにあまり置かれていない傾向があったりするので直接比較はできませんが,72時間960mmとすると,AMeDAS全データ中では16位くらいになります.大きな記録であることは間違いありませんが,全国的に見ておよそ起こりえないような豪雨と言うほどではありません.