2010年9月豪雨災害に関する静岡県小山町でのアンケート結果報告書を公開
昨年9月8日に台風9号及びその北東方に位置する停滞前線の活動により,静岡,神奈川県境付近を中心に豪雨による災害がもたらされました.
2010年9月8日の台風1009号による豪雨災害に関するメモ
http://disaster-i.net/disaster/20100908/
当研究室では,このときに最も大きな被害を受けた静岡県小山町において,同町の協力を得て災害時の行動などに関する住民アンケート調査を行いました.昨日9月15日に同町で結果概要の報告会を行いましたが,合わせて,このアンケートについての基本的な集計結果を報告書にまとめ,公開しました.
2010年9月8日の大雨による災害に関するアンケート調査
(静岡県小山町)
http://disaster-i.net/notes/110915report.pdf
主な内容は以下の通りです.
背景・調査手法
- 調査対象世帯は,避難勧告が出された地区の他,地形的に今回の豪雨による災害発生の危険性があった地区・世帯を選定.
- 調査票は自治会を通じて配布,回収.配布は2010年12月上旬で,回収は同12月下旬までに完了した.配布数は同町役場が把握している世帯数に従い1032世帯とした.回収数は874通,配布世帯に対する回収率は84.7%.
主な結果とコメント
- 指定避難場所以外の場所に避難した人も多いが,避難勧告対象地区および危険性のあった地区の世帯のうち何らかの形で避難した人は2割.必ずしも積極的な避難行動がとられたとは言い切れない. 避難開始時刻も必ずしも早くなく,最も激しい現象が発生しつつあった15時以降に避難した人が4割.
- 何らかの被害が生じたのは回答者の2割.何らかの被害が生じた世帯を分母としても,避難率は3割程度にとどまる.
- 被害軽減の「成功率」は比較的多い「自家用車の移動」や「重要書類持ち出し」でも2割弱にとどまり,大半は被害軽減の「意思無し」.
- 避難者のうち,被害が出たので避難した者は15.6%で,避難者の多くは危険な状況になる前の避難に成功.避難していない者は,結果的に被害が生じなかったので避難しなかったとする回答が45.2%であり,判断が妥当かは検討の余地.
- リアルタイム雨量・水位情報の認知率は3割.今後の利用意向は6割だが,積極的な利用意向は2割.
- 「大雨・洪水」,「がけ崩れ・土石流」ともに,居住地は「やや危険」または「危険」と考える回答者が7割.防災マップは7割が「見たことがある」.
- 昭和47年7月豪雨の被害規模を正しく認知している回答者は4割だが,この災害があったことを認知している回答者は9割近い.
- 避難勧告の「空振り容認派」が9割.避難判断のタイミングは「行政判断派」が6割.
- 昨年の災害では,幸い人的被害は最小限にとどまった.しかし,必ずしも避難率は高くない.特に被害が出そうにないから逃げなかった,は「結果的成功」.「適切に避難したから被害が少なくすんだ」とは言い切れない状況.今後も油断せず,各種の対応が必要.
« 静岡県小山町で豪雨災害に関するアンケート調査の報告会・9/15 | トップページ | 浜松市天竜区水窪町の天然ダムについて »
「論文・寄稿・刊行物」カテゴリの記事
- 「豪雨による人的被害発生場所と災害リスク情報の関係について」を公開(2020.04.23)
- 自然災害科学中部地区研究集会での当研究室からの発表予稿(2016.03.06)
- 居住地の風水害の危険性に対する住民の認識について(2014.08.28)
- 【一部訂正】防災気象情報に関するアンケート (2013年11月実施・大雨特別警報等)(2013.12.20)
- 防災気象情報に関するアンケート (2013年11月実施・大雨特別警報等)を公表(2013.12.12)