« 10/16,11/5,11/6にシンポジウムを開催します | トップページ | 自然災害学会で発表予定の予稿2件公開 »

2011年10月 2日 (日)

紀伊半島豪雨1ヶ月・当方コメントの共同通信記事2件

9/30付けで共同通信から配信された下記記事2件は,どこの新聞社でも採用にならなかったみたいです.昔はYahooニュースに共同通信記事が載っていたのでネット配信は広くされていたのですが,今はそれもありませんから,すっかり埋没になります.

結構丁寧に取材していただいたので残念です.記事を下記に引用します.

五條市宇井地区は現地を見ていませんが,通常の洪水や斜面崩壊,土石流といった現象とは少し様相が異なる状況のようで,その意味では「想定外」と言えます.しかし,実際に起きた現象そのものを想定していたわけではないものの,急傾斜地崩壊危険箇所にはなっており,土砂災害があり得る場所であったことも確かです.非常に難しい所ですが,やはり,すべての基本はそれぞれの地域の災害リスクを理解することだと思います.

2件目の一問一答記事は,当方の意図が特に誤りなくまとめられています.それが当たり前と思うかも知れませんが,新聞記事に載る「コメント」は発言者の言葉そのものではないことが大半です.

--------------------------
豪雨被害、高台に集中 「状況に応じて避難を」
2011.09.30 共同通信

 紀伊半島豪雨で大規模な土砂崩れに見舞われ、死者・行方不明者11人を出した奈良県五條市の宇井地区では、高台の自宅にとどまった人に被害が集中する一方、熊野川沿いの集落では多くの住民が声を掛け合って避難し無事だった。専門家は「高台は必ずしも安全ではない」と指摘。固定観念にとらわれず、状況に応じて避難することの重要性を強調している。
 同地区は千メートル級の山々に囲まれ、1級河川の熊野川が目の前を流れる集落。38世帯のうち約30世帯は川よりも約30メートル高い旧国道沿いに、残りは川沿いの低い土地に住む。
 上流には国が管理するダムがあり、雨が降るたびに住民は放流を経験してきた。川沿いに住む自治会長の上田史孝(うえだ・ふみたか)さん(65)は「(放流の)サイレンが聞こえたら、川沿いの人たちに呼び掛けて早く避難してきた」と話す。台風が来る前に自主避難した30代の女性も「親から川の水がどこまでなら大丈夫でどこから危険か、いつも言われて育った」と振り返る。
 その一方で、地元住民によると、高台の住民の一部は朝食の支度で家に戻り、土砂崩れの被害に遭った。前日まで豪雨による災害を警戒し避難していたが、雨が弱くなったため帰宅したという。土砂崩れの前に、行方不明になった住民らが高台で集まって会話をしている様子も目撃されている。
 地元消防団の男性は「高台なら大丈夫と思ったのだろう。もっと強く避難を呼び掛ければよかった」と無念さをにじませた。
 静岡大防災総合センターの牛山素行(うしやま・もとゆき)准教授(災害情報学)は「近くに川が流れる地域では洪水などに意識がいきがちだが、同時に土砂災害の危険性があることも考えるべきだ」と指摘している。
-------------------------
地域の危険箇所の理解を 静岡大の牛山素行准教授
2011.09.30 共同通信

 紀伊半島豪雨では避難指示や避難勧告を出さなかった行政側の対応の是非が問われた。住民はどう自分の身を守ればいいのか。豪雨災害に詳しい静岡大防災総合センターの牛山素行准教授に聞いた。
 -今回の災害の特徴は。
 72時間の降雨量が地域気象観測システム(アメダス)で過去30年で最大だった。奈良県十津川村野尻の村営住宅が流されたのは、川になだれ込んだ土砂で川の水が盛り上がり津波が起きたためだが、想定外の現象だ。和歌山県の那智川流域は大河川と違い、谷底平野の地形で洪水の勢いが早くなって下流に押し寄せ被害が拡大した。
 -避難指示や避難勧告を出す難しさは。
 今回の犠牲者の半数は土砂災害が原因。洪水は水位が目安になるが、土砂災害の場合には見極めが難しい。市町村側は対象範囲を絞りきれず「おおかみ少年」と非難される恐れもあってためらいが生じるのではないか。
 -市町村はどう対応すべきか。
 避難発令で市町村がすべて背負い込む必要はない。国や県が持っている情報を生かす。非常時に相談しても連携できるよう、日ごろから情報交換をする場を持つことが重要だ。住民には、ハザードマップだけでなく、複数の手段で危険箇所を知らせるべきだ。
 -住民側はどう行動したらいいのか。
 避難指示や避難勧告は強制力がなく、最終的には個人の判断になるが、普段から自分の住んでいるところのどこに土砂崩れなどが起きる危険があるのかをよく理解しておくことが必要だ。
 -人命に危害を与える恐れのある土砂災害警戒区域の指定が進まない。
 (被害の大きかった)和歌山県那智勝浦町や新宮市では全域で指定されていない。居住地にどういう影響があるのか分かりやすく伝えるものなので、指定をさらに進めるべきだ。
  ×  ×
 うしやま・もとゆき 1968年長野県生まれ。静岡大防災総合センター副センター長。研究分野は災害情報の伝達や避難行動。

« 10/16,11/5,11/6にシンポジウムを開催します | トップページ | 自然災害学会で発表予定の予稿2件公開 »

災害」カテゴリの記事

無料ブログはココログ

ブログ内検索

Twitter