災害時の学校での対応として,「児童引き渡し」が近年積極的に取り組まれていますが,以前から私はこのやり方にどうにも違和感を覚えていました.東日本大震災では,「引き渡し」をした児童生徒が多く遭難したことが確認されています.
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保護者引き渡し後、120人犠牲 震災被災3県の小中生 http://bit.ly/uEG4vt
東日本大震災で、死亡・行方不明になった岩手、宮城、福島3県の公立小・中学生342人のうち、3分の1以上の120人は地震発生後に保護者が学校から引き取った後で犠牲になったことが23日、共同通信の集計で分かった。
被災地では在校中の児童生徒は全員無事だった学校が多く、引き渡しや学校不在時の対応が新たな課題に。震災後、津波警報などの発令中は引き渡しを原則禁止とする動きが出てきた。
文部科学省の有識者会議も、津波では保護者も学校にとどまることなどを提言している。
2011/12/23 共同通信
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津波ばかりでなく,気象災害でも「警報が出たから児童引き渡し」は,いいやり方ではないと思います.基本的に発災後の対応だけを考える地震災害と,発災前の警戒期が存在する気象災害,津波災害は考え方が異なることを理解しないといけないと思います.
その意味で,警報発表時には下校させることが大前提になっている,岐阜県のこのような方向性 http://goo.gl/juaHO はいささか違和感を覚えます.多くの場合,学校にいる方が安全である可能性が高いと思われるので,基本は「下校させない」ではないでしょうか.
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荒天時の下校対応 県教委が基本方針…岐阜(読売新聞)
http://goo.gl/DnR6q
今年9月に台風15号で、岐阜県多治見市の小学4年生(当時9歳)が下校途中に側溝に転落し、流された事故を受け、県教委は2日、台風などの気象警報発令時の対応を定めた基本方針を、県内の市町村教委に通知した。
授業の打ち切りを早い段階で判断することや、児童や生徒のみで下校させないことなどを定めている。県教委が荒天時の小中学生の下校について、方針を示すのは初めて。
県教委は事故後の9月27日、災害時の学校の対応のあり方を定める検討チームを設立。台風15号が接近した際、小中学校の対応状況を調査し、問題点を洗い出してきた。
基本方針は、▽授業打ち切りを早い段階で判断▽学校周辺を把握している校長が判断▽児童生徒のみで下校させない――の3項目が柱。授業打ち切りの判断は、荒天で危険が予見される段階で、躊躇(ちゅうちょ)しないことを求めている。
台風15号では、給食を食べるのを待って下校させたため、児童や生徒が台風の直撃を受けたケースがあった。そのため、学校が保護者に給食を提供できない場合もあることを伝えるよう付け加えた。
また、校長の判断については、同じ市内でも気象状況や通学路など実情が違うため、各校の校長が判断すべきとしている。これまで各校は、市町村教委の指示を受けるケースが多かったが、今後、校長は市教委や保護者と連携を取り、自ら判断する必要に迫られる。
児童生徒を下校させる際には、教師やPTA、地域のボランティアら大人に引き渡して、安全を確保する必要があるとしている。
県内では近年、集中豪雨などによる河川の氾濫や土砂災害が多発している。それだけに、県教委は「危機意識を持って、各地域の実情に合わせ、具体的に対応して欲しい」としている。
(2011年12月6日 読売新聞)
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児童を「引き渡す」側の学校が「責任を負いたくない」という意識自体は私にもよくわかるのですが,不用意に「引き渡し」てその結果責任を問われたりする可能性も考えると,手元に引き留めておいた方がまだましのような気がします.最も重要なことは,最善も次善の行動も,場所の条件によって異なると認識するだと思います.一律の対応でなく現場の判断を強調している意味では岐阜県の考え方はいいと思うのですが,単に各学校で考えろになってしまっては,難しいだろうなと思います.
静岡県は現実的.気象災害対策もがんばってほしい(じゃなくてがんばろう)→ 保護者引き取り後120人犠牲 静岡県、津波収束まで引き渡さず http://www.at-s.com/news/detail/100087269.html