平成23年7月新潟・福島豪雨による災害の特徴
下記文献を公開しました.
牛山素行・横幕早季,2012:平成23年7月新潟・福島豪雨による災害の特徴,自然災害科学,Vol.30,No.4,pp.455-462.
http://www.disaster-i.net/notes/2012JSNDS30-4.pdf
だいぶ時機を失しているのですが,刊行物の都合により今の発行となりました.昨年7月末の新潟・福島豪雨についての初期的な解析結果をとりまとめたものです.「おわりに」を抜粋します.
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2011年豪雨は,よく似た地域で発生した2004年豪雨に比べ,短時間降水量,長時間降水量,豪雨域の広がりなど,様々な観点から見ても規模の激しい豪雨であったと見なされる.しかし,8月上旬時点での資料によれば,2011年豪雨の被害は2004年豪雨に比べ,人的被害,家屋被害とも少ない傾向が見られる.特に人的被害が少なかったことについて,2004年豪雨を教訓とした避難対応が効果をもたらしたといった趣旨の報道もなされている(例えば8月1日付読売新聞).ただし,浸水家屋数も少なかったことから,単に避難行動などのソフト対策が効果を発揮したというより,堤防整備等により市街地への洪水流の侵入が軽減されるなど,ハード対策との相乗効果である可能性も高い.単純に成功例として評価するのではなく,避難行動が実際に適切に行われていたのかといった観点からの検証が今後必要だろう.
死者・行方不明者は数としては近年の日本の豪雨災害事例と比較しても多くはなかった.しかし,土嚢積み作業中に洪水によって流されるという,近年全く見られなかった被害形態が複数確認されたことや,近年注意が喚起されていた,避難途中の遭難者が生じたことなど,今後に向けた課題と思われる点も見られた.人的被害の発生状況については,今後筆者自身も検証を進める予定である.
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