陸前高田・気仙沼における津波人的被害の特徴
現在,東日本大震災に伴う人的被害の傾向についての調査を進めていますが,本日,下記2件の資料を公開しました.
陸前高田の資料は2月末に公開したものの改訂版です.今回新たに,津波の規模と犠牲者率の関係について検討しました.主な結果を挙げると以下となります.
- 犠牲者は,高田町,気仙町に集中しており,広田町,小友町などでは相対的に少ない.
- 犠牲者数100人以上の500mメッシュが4メッシュ,犠牲者率10%以上が12メッシュ,20%以上が6メッシュ確認され,最大29%だった.
- おおむね海岸近くで平均津波浸水深さが大きく,人口密度の高いメッシュで犠牲者率が高いという,比較的単純な傾向が読み取れる.
- 陸前高田市では,海岸近くの低地にもともと定住人口が少なく,海岸近くの低地(想定浸水深が深い)場所で犠牲者率が低い(あるいは高い)といった傾向は読み取れない.
気仙沼の資料は今回新たに公開したものです.気仙沼では,犠牲者の居住地住所とともに,ご遺体が発見された場所の情報が得られましたので,これを元にした集計を行っています.主な結果を挙げると以下となります.
- 犠牲者は,気仙沼市中心部(特に南気仙沼駅周辺),鹿折地区,松岩地区,波路上地区などで目立ち,唐桑,大島,本吉などでは相対的に少ない.
- 陸前高田市で見られたような犠牲者数100人以上の500mメッシュは確認できず,犠牲者率も陸前高田市のような20%以上は存在せず,最大14%で10%以上が3メッシュだった(陸前高田市では12メッシュ,最大29%).気仙沼市では犠牲者数自体は多いが,陸前高田市と比べると特定地区に集中しなかった可能性がある.
- おおむね海岸近くで平均津波浸水深さが大きいメッシュで犠牲者率が高いという,比較的単純な傾向が読み取れる.
- 犠牲者の発見場所は,「居住地敷地内」が11.6%で,0.5km以内と合わせると47.2%と,自宅近傍で発見された犠牲者がかなり多い.遠方での発見者には津波により流された者も含まれることを考慮すると,気仙沼市の犠牲者のうち,過半数程度が,津波到達時に自宅付近にいた者である可能性がある.