平成24年7月九州北部豪雨(かってつけた名前です)の特徴について,7月13日午後現在の資料から整理しました.
●降水量の特徴
気象庁の集計によれば,全国AMeDAS観測所のうち,統計期間20年以上で最大値を更新したのは、7/12は1時間降水量3カ所、3時間5カ所、24時間1箇所、72時間0箇所。7/13は16時現在で同1箇所、2箇所、0箇所、0箇所。
24時間降水量最大値を更新した阿蘇乙姫の記録は507.5mm。これはAMeDAS全地点の記録と比べると上位50位に満たない。阿蘇乙姫では1時間降水量最大値も更新しているが,その記録は108mm。これも全国の記録と比較すると特筆するようなものではない。
最大値更新観測所数、降水量の値そのもののいずれの点で見ても、今回の豪雨は局所的であり、かつ降水量の値自体も「当該地域としては非常に大きいが、全国的に見て非常に大きいとは言えない」規模。
●人的被害の特徴
人的被害は、7月13日14時現在の報道では,死者・行方不明者27人。直近だと、2011年台風12号(同97人)よりだいぶ少ないが、2009年台風9号(兵庫県佐用豪雨、同27人)、2009年7月中国・九州北部豪雨(同30人)と同等規模。最近5年間のうち,2010,2008,2007年はこの規模の災害はない。
現在、報道で確認できる範囲では、死者・行方不明者27人中24人が土砂災害による犠牲者。近年の豪雨災害では土砂災害の犠牲者が最も多い(1/3程度)が今回は,近年の事例としても土砂災害犠牲者が偏在した事例と言える。
九州北部豪雨による死者・行方不明者発生カ所のおおよその位置。拡大して信じないこと!!。位置は地名に付けただけで当てになりません。 http://goo.gl/maps/3Plc
一の宮町(現阿蘇市)の土砂災害、竹田市の洪水、白川流域のはん濫などは、1990年7月災害の極めて相似性が高いことは昨日も指摘した通り。昭和28年6月西日本水害(この時の方が降水量や被害は遙かに大きい)との共通点も見られそう。
●災害情報面の特徴
災害情報面では、「これまでに経験したことのない大雨」という気象情報が初運用されたことが何より大きな特徴。
これがその現物
↓
-----------------------------------------------------------
記録的な大雨に関する九州北部地方(山口県を含む)気象情報 第4号
平成24年7月12日06時45分 福岡管区気象台発表
熊本県の熊本地方と阿蘇地方、大分県の中部と西部を中心に、これまでに経験したことのないような大雨になっています。この地域の方は厳重に警戒してください。
-----------------------------------------------------------
「経験したことのない大雨」についてはいろいろと意見が出てきそうな所。私自身で調べてみたいと思います。まとめきれるのか?、とも思いますが、自分が強い問題意識を持ったことは、自分の責任で調べないと。
なお、今回の「経験したことのない大雨」情報は、本当に「経験したことのない大雨」になった後で発表された。各地での土砂災害の発生時刻がよく分からないが、発生時刻には間に合わなかった可能性があるように思われる.