8月30日付け毎日新聞(全国)南海トラフ巨大地震特集面
8月30日付け毎日新聞(全国)南海トラフ巨大地震特集面に,当方のコメントが下記のように掲載されました.
「(行政は)想定を示したのだから責任を持って安全を確保すべきだ」という考え方に私は賛同しません.災害に関する様々な情報が整備されつつあり,それらをもとに「どこで,どのように生活するか」を考えるのは最終的には各自だと思います.できること,やっておかなければならないことはいろいろあるはずです.
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●個々人の判断材料に
牛山素行・静岡大准教授(災害情報学)
今回の想定は、そもそも東日本大震災を受けて大きな被害想定を出すために示された数字といえる。驚いたり、悲観したりする必要はない。条件設定を少し変えるだけで結果も大きく変わっており、細かい数字にとらわれることもない。浸水域や浸水深などを見て、地域ごとのリスクの濃淡を知ることに役立てればよいのではないか。
東日本大震災後は、津波に備える動きが活発だが、豪雨災害など他の災害に対しては、ここまで頻度の低い大規模なものにまで備えようとはしていない。例えば火山災害でも、今回想定された地震・津波のような低頻度巨大災害と同じような壊滅的な被害が出る可能性はある。まずは頻度の高い災害への対策から始めるべきだろう。
被害想定はもともと自治体などが防災計画を立てるためのものだが、今回の想定ほど大規模の災害に対しては、万全の対策を取るのは極めて難しい。自然に対してはかなわない場合もある.そうした場合は、そうした場合は、それぞれが納得する備えをすればよいと思う。例を挙げれば高台移転をするか、しないか。今回の想定は個々人がそういう判断をするための材料になる。
被害想定は唯一絶対のものではない。対策ができないから思考停止するのではなく、従来できていなかったことをまずやるべきだ。地震・津波災害においてすべてに優先するのは耐震化。道路や住宅が壊れてしまえば、津波からの避難さえできない。町の耐震性を上げることは、絶対に無駄にならない。
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