災害への対応-地域知ることが出発点
11月15日付け静岡新聞「時評」に下記記事を寄稿しました。繰り返し主張していることで、まさにタイトル通りの内容です。
地域を知るにはどうしたらよいか? 先日刊行した「防災に役立つ地域の調べ方講座」 http://goo.gl/Ua0Qq は私なりの解の一つですが、さらに何をしていったらよいのかを考えていきたいと思っています。
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時評=災害への対応-地域知ることが出発点
地域や個人で防災について考えたり,取り組んだりする際,様々な方法が考えられるが,すべての取り組みのスタートラインは,「自分の居住地域・活動地域の災害に対する特性を知ること」だと筆者は考えている.
災害は「素因」と「誘因」の組み合わせで発生する,という説明の仕方がある.ここで素因とは,それぞれの土地が持っている災害に関わる性質のことで,たとえば,地形,気候などの自然素因や,人口,産業構造といった社会素因が挙げられる.誘因とは,地震,豪雨,津波など,被害(災害)を発生させる直接的な引き金となる現象のことである.誘因だけでは災害にはならない.たとえば,砂漠の無人地帯で巨大地震が発生しても社会的には何の被害も生じず,「災害」にはならない.その地震と同程度,もしくはより弱い地震であっても,「人口が密集している」といった「素因」が存在する土地で発生すれば「災害」となる.
災害を軽減するためには,「素因」と「誘因」双方の予測,つまり「いつ,どこで,どんなことが起こるか」を予測することが重要となる.しかし,特に「誘因」,すなわち「いつ」を予測することが大変難しい.地震予知が困難であることは最近も議論になっているところであり,台風など気象現象の予測も,精度が向上しつつあるとは言え,完全ではない.一方「素因」,つまり「(いつかはわからないが),どこで,どんなことが起きそうか」を知ることは,「誘因」の予測に比べれば可能性がある.「素因」を知るための代表的な資料がハザードマップだが,他にも「素因」を知るための様々な資料が整備されつつある.限られた経験や,独りよがりな観察にもとづくのではなく,これらの資料を活用することも大変重要である.今月刊行となった拙著「防災に役立つ地域の調べ方講座」(古今書院)は,このような取り組みに役立つことを目指して著したものである.
災害への対応方法は,災害の種類によって大きく異なる.地震に備えるためのノウハウが,水害に対してはかえって危険な結果をもたらすといったこともあり得る.まずは,「身の回りではどのような災害が起こりそうか」を具体的に理解することが重要である.その上で「ではどうするか」を考える段階となるが,これは人それぞれで事情も異なるものであり,各自で考えなければならない.
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