第二回「土砂災害への警戒の呼びかけに関する検討会」についての感想
10/31におこなわれた「土砂災害への警戒の呼びかけに関する検討会」について,委員として参加した立場から,個人的な感想を挙げます.
まず,この検討会の性質ですが,国土交通省水管理・国土保全局砂防部と気象庁予報部が事務局となって開催されているもので,「気象庁(だけ)の検討会」ではありません.また,この場で何かの方針を「決定」する場ではありません.
第2回の検討会で提案された主要事項として,土砂災害に関する気象情報を,5段階の「レベル」で表現しては,という案件が挙げられます.検討会のページ http://goo.gl/WXOye の資料6 http://goo.gl/AIq4y 2-3ページが関係箇所となります.
気象情報の「レベル化」は,たとえば「大雨警報」と「土砂災害警戒情報」とでどちらが状況的深刻度が高いかよく分からないとか,「経験したことのない大雨」という情報を英訳できない(汎用的な表現で言い換えられない),といった課題への対応策のひとつとして,私は有りだと考えています.
ただし,具体論に入ると課題は山積と感じます.「レベル化」の利点は,たとえば「レベル3」と言っただけで状況の深刻度がおよそ理解できるという点にあると思いますが,そのためには,ハザードが違っても「レベル3」の意味が大体そろっている必要があります.
「レベル化」がすでに行われているのは,河川水位情報と,火山関係情報です.火山とでは,現象の性質があまりに異なるので整合を取ることが難しいかもしれませんが,同じ雨起因の情報である河川については,十分整合を取る必要があると思います.
たとえば,河川の場合「レベル4」(氾濫危険情報)が出された場合の住民側の推奨行動は「避難完了」ですが,今回の提案では土砂においては「避難指示」となっており,整合しません.この点については私も席上で発言しました.
レベル4とレベル5は,何らかの形で土砂災害が「発生」したことを意味する情報であると提案されています.比較的頻発する土砂災害警戒情報の発表よりも深刻な状況であることを告げる情報を志向しており,このこと自体は私は意味があると思っています.ただし,「発生」情報は,そもそも発生をどう覚知するかなどの課題もあります.このあたりはもう少し議論が必要なところと感じました.
「レベル化」は土砂災害についてだけ議論しても始まらない部分もあると思います.「防災気象情報の改善に関する検討会」 http://goo.gl/gtJYp での議論が始まっているので,土砂検討会の議論はこの検討会へつないでいくものになるのでは,と思っています.
そもそも「レベル化」することが防災情報として有効なのか?,という課題もあります.これについては,情報の受け手の認識などに関する基礎調査を踏まえて考えた方がよい,という議論が,土砂,気象情報双方の検討会ですでに出ています(このあたり,議事概要を深読みください).
「レベル化」の有効性や,各種気象情報に対する認識などについての基礎調査は,少なくとも私自身は年度内に実施することを計画しています.その結果も踏まえて「防災気象情報の改善に関する検討会」の場での議論に参加させていただければと思っています.
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