12月7日津波警報時の避難について考えたこと
2012年12月7日17時18分頃,三陸沖を震源とするM7.3の地震が発生し,17時22分に気象庁は宮城県に津波警報,青森県太平洋沿岸,岩手県,福島県,茨城県に津波注意報を発表しました.
験潮所で最も大きい津波を観測したのは宮城県鮎川でした.瞬間的ですが潮位偏差にして約1m,TP基準の潮位でも0.9mくらいが観測されました.これは日常の潮位変動の幅を十分越えており,付近を精査すれば標高で1m以上の所に浸水痕跡が認められるかもしれません. http://t.co/YFpA8uKa
大船渡 http://t.co/PFSPFCjI では確かに津波が観測されているけど,潮位自体は通常の潮位変動の範囲内です.仙台新港も同様.大きな津波が観測された場所はある程度限定的だったようです.しかし,これはあくまでも結果的にそうだった,ということです.
今回の津波は,所によっては十分人的被害を生じうる事例だったと考えられます.特に,昨年の地震・津波の影響により,地盤沈下,防潮堤の損壊などが生じていることを考えると,避難勧告の有無にかかわらず,宮城県付近では,海岸線付近のみならず居住地域付近でも津波からの避難行動を取った方がよかった事例だと私は考えます.
NHKによると,宮城県内では自治体が確認した避難者が17700人程度とのことです. http://goo.gl/Zfyed この数をどう見るかはなかなか難しいところです.たとえば,2010年チリ津波時,宮城県内で自治体が把握した避難者数は約12300人(消防庁19報)でしたから,これと比べるとあまり変わっていないように見えます.
無論,現在の宮城県付近の沿岸部は,津波により海岸近くの居住者が激減していますから,2010年の状況と直接退避はできません.海岸近くで,津波警報等が出た際に避難した方がよい人口というのが,あまり明確に決められないというのが現状かと思います.
非常におおざっぱな推定ですが,東日本大震災時の津波浸水域内の人口が,宮城県は331902人 http://goo.gl/vFQyE で,2012年11月現在の宮城県内の仮設等への避難者は112689人 http://goo.gl/WsI4z とされています.この差が津波浸水域内の現在の人口だとみなすと,おおむね20万人くらいというところでしょうか.昨年の津波到達域を,「津波警報等が出た場合に避難した方がよい範囲」とみなすと,極めてざっくりした値として,宮城県内で津波の可能性がある時に避難の対象となる人口はオーダーで言うと10万人規模といえそうです.
この過程を前提にすると,避難者17700人は,(一般的な災害時の避難率と比べると)多いとも少ないとも言えない感じになりそうです.
ただ,実質的な意味での避難者は,自治体把握の避難者の少なくとも数倍規模存在する,というのが2010年チリ津波時の当方の調査結果 http://goo.gl/jlJCQ です.ますます話が不明確になりますが,少なくとも「避難者が非常に少なかった」とは言えなさそうに思います.
もう一点関心事.報道等からの印象では,車での避難者がかなりいたように感じられます.車でのの避難はいろいろと議論がありますが,是非の議論は別として,実際には少なからぬ人が車で避難し,それを制限することは難しいだろう,ということは現実として受け止めるしかなさそうです.
« 災害への対応-地域知ることが出発点 | トップページ | 防災フェロー養成講座第三期受講生 まもなく募集開始です »
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 2021年 新年のご挨拶(2021.01.01)
- 水害時 避難イコール避難所Go! だけ,ではない(2020.04.07)
- 時評=災害教訓に学ぶ難しさ 多くの事例収集重要(2019.09.30)
- 時評=大雨の際の避難行動 流れる水に近づくな(2019.07.31)
- 「大雨警戒レベル」に関する補足的なメモ(2019.06.03)