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2013年3月30日 (土)

2012年度に当研究室関係で行った学会発表の予稿をweb公開

年度末のいろいろの整理の中で,2012年度に当研究室関係で行った学会発表の予稿をweb公開しました.ほとんどは,防災フェロー養成講座受講生の皆さんの発表です.以下にタイトルを挙げます.

横幕早季・牛山素行・大森康智・佐津川貴子・増田俊明,防災実務者を対象とした人材育成講座の構築〜ふじのくに防災フェロー養成講座第一期を終えて〜,第31回日本自然災害学会学術講演会講演概要集,pp.9-10 goo.gl/acieH

横幕早季・牛山素行,日本自然災害学会災害情報委員会によるツイッタ—活用の試み,第31回日本自然災害学会学術講演会講演概要集,pp.89-90,2012年9月18日 goo.gl/I4ARB

杉村晃一・牛山素行・横幕早季・本間基寛,岩手県山田町における東日本大震災による人的被害の特徴,第31回日本自然災害学会学術講演会講演概要集,pp.129-130,2012年9月19日 goo.gl/fAZz0

横幕早季・牛山素行・大森康智・増田俊明・内山敬介・岩田孝仁,静岡県における防災情報共有システム利用者の意見集約手法の開発,日本災害情報学会第14回研究発表大会予稿集,pp.240-243,2012年10月27日 goo.gl/HkchN

内山敬介・岩田孝仁・牛山素行・横幕早季,静岡県における災害時情報共有システムの開発と検証,日本災害情報学会第14回研究発表大会予稿集,pp.236-239,2012年10月27日 goo.gl/yzpyN

荒川修平・牛山素行,テレビ放送における防災情報の伝達状況に関する調査,平成24年度自然災害科学中部地区研究集会,pp.32-33,2013年3月2日 goo.gl/kGyoC

塩崎竜哉・牛山素行,内水氾濫に対して設定した避難勧告発令基準の検証,平成24年度自然災害科学中部地区研究集会,pp.34-35,2013年3月2日 goo.gl/X9MCz

神村典浩・牛山素行,原子力災害時の住民避難に関する教訓の分類・整理,平成24年度自然災害科学中部地区研究集会,pp.36-37,2013年3月2日goo.gl/6WTYI

杉村晃一・牛山素行・本間基寛・横幕早季,避難猶予時間に着目した三陸海岸における東日本大震災津波犠牲者の特徴,平成24年度自然災害科学中部地区研究集会,pp.38-39,2013年3月2日 goo.gl/F0kuE

2011年度分も少し追加公開しました.以下です.

貝沼征嗣・牛山素行,実災害記録に基づく豪雨災害対応行政危機管理演習構築の試み,平成23年度自然災害科学中部地区研究集会,pp.37-38,2012年2月29日 goo.gl/YsGde

遠山忠昭・牛山素行,静岡県気象災害小史からみる大雨災害の特徴,平成23年度自然災害科学中部地区研究集会,pp.19-20,2012年2月29日 goo.gl/6aAeY

牛山研究室関係の皆さん,またお世話になったみなさま,今年度もありがとうございました.次年度も引き続きよろしくお願いします.

2013年3月29日 (金)

優先対策見極める材料 牛山素行・静岡大准教授に聞く

3月19日付け中日新聞(東海本社版)に下記記事が掲載されました.よくまとめていただいたのですが,ネット上にも,また中日の記事データベースにも掲載されないので,紹介しておきます.

南海トラフ被害想定(経済被害)を受けての私のコメントです.

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優先対策見極める材料 牛山素行・静岡大准教授に聞く

 「最新の科学的知見に基づく最大クラスの地震」を前提とした今回の被害想定を、どう受け止めるべきか。静岡大防災総合センター副センター長の牛山泰行准教授(災害情報学)は「大きな数値に踊らされるのではなく、やれる対策をやることに尽きる」と訴える。

-今回の被害想定をどう見ればいいか。
 数値はあくまで対策を考えるための目安にすぎない。地震の規模や震源域の評価次第で大きく変わるものであり、それを基に想定される地震や津波が大きくなったからといって、その通りの現象が必ず起きるとか、状況が切迫しているわけではない。被害を軽減するために、どこが弱いかや何をすべきかを確認したり計画したりするための資料だ。

-講ずべき震災対策が必ずしも変わるわけではない、と。
 そう。大きい数値が出たから従前の対策が役立たなくなるわけではないし、われわれの社会はこれまで完ぺきに対策を取ってきたわけでもない。これまでに想定されている規模の現象に対してもやらねばならないことは多い。
 数値に一喜一憂したり「何もできない」と思考停止になったりしてはならない。被害想定には典型的な被害が挙げられている。数値より起こりうる現象の種類に目を向けるべきだ。ただし、次の災害ではまた新たな課題が顕在化する可能性もあることには注意が必要だ。

-行政はどう対策の優先順位を付けるか。
 優先順位は必要。しかし絶対的な正解はなく、行政でなく政治の問題だ。すべて完ぺきに対策を取るのは無理だし、その点は社会的にも認めるべきだ。今回の被害想定は、それぞれ被害の大小関係を比べ、対策の優先度を見極める判断材料の一つになる。

-原発事故は考慮に入れられなかった。
 今の段階では仕方がない。種類が違いすぎる。原発事故は地震がなくても起こりうる。今後時間をかけて、それぞれ被害を評価した上で重ね合わせていくしかないのではないか。東京電力福島第一原発事故を教訓にすると称して今回の被害想定に盛り込んだとしても、それは一つの特定ケースの想定にすぎない。

2013年3月26日 (火)

「災害情報」の不足-利用者側も探索努力

3月6日付け静岡新聞に,下記記事を寄稿しました.

特に豪雨災害時における「情報が不足している!」という「課題」の指摘とやらは,もはやいい加減にしていただきたい,というのが率直な気持ちです.完璧ではありませんが,使える情報はたくさんあります.

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時評=「災害情報」の不足-利用者側も探索努力

 災害時の教訓としてしばしば聞くのが「情報不足」を指摘する声である.たとえば,「山の方でどんな雨が降っているか把握できなかった」とか,「もっと詳しく細かい情報が欲しかった」といった声である.

 「情報不足」を改善するためには,新しい情報を作る,情報を詳細にするなどが考えられがちだが,このやり方が必ずしも「わかりやすい情報」にはつながらない.たとえば,現在気象警報は市町村単位で発表されるが,2010年以前は「中部南」「遠州北」のように,複数市町村をまとめた地域単位で発表されていた.市町村単位の方が空間的に細かく警報を出せる利点があることは間違いない.しかし,テレビのテロップのように文字で伝えることを考えるとどうだろうか.以前は「中部南に大雨警報」と伝えればよかったが,市町村単位だと個々の市町村名を長く羅列しなければならない.情報を詳細にすることは,情報の量を増やすことであり,情報の量が増えれば,情報処理能力を高める必要がある.最末端で情報を処理するのは我々人間だが,人間の能力は急に高められるものではない.情報を詳細にするのであれば,情報利用者である我々自身にも相応の覚悟が必要になる.

 もっと根本的な問題として,「不足している」と指摘された情報が,単に情報利用者に認知されていなかっただけで,実際には存在している,といったケースも珍しくない.先に挙げた「山の方でどんな雨が降っているか把握できなかった」という声は,豪雨災害の後にしばしば聞くが,率直に言って事実誤認である.雨量の観測所としてはまず気象庁アメダス観測所が全国に約1300か所展開されており,このほか国土交通省,都道府県などにより数千か所の観測所が展開されている.山岳部にまで観測所が置かれ,その観測値の多くが国土交通省「川の防災情報」などのホームページで参照可能である.雨量は観測所の雨量計だけでなく,気象レーダーによって遠隔的にも観測されており,観測所の観測値と補い合い,全国を1km格子に区切った格子ごとの雨量が公表されている.「山の中の雨量がわからない」という時代は,我が国においては完全に終わっている.無論,何もかもがわかっているわけではなく,本当に「不足している情報」も少なくないが,すでにある情報も多い.

 災害に関する「情報不足」の解決策は,単に今ある情報をさらに増やせばよいというものではない.まずは,行政機関自身は無論のこと,我々住民も,身の回りにどのような災害情報が整備されているのかを探索することが必要ではなかろうか.

2013年3月 8日 (金)

特別警報ができても,警報が格下げになったのではありません

注意報・警報の上に「特別警報」 閣議決定、秋にも新設(朝日新聞) goo.gl/DucYS 有料版記事だとこの後に私のコメント「特別警報が出るまで逃げなくていい,と思ってしまうリスクもある。気象庁によるいっそうの説明が必要」などと書かれています.

気象庁によるリリース→ 気象業務法及び国土交通省設置法の一部を改正する法律案について goo.gl/sKX3B 資料は goo.gl/yCm1C が明示的でしょう.

「特別警報」について,気象庁関係者から話を聞いたところでは,「従来なかった全く新たな情報が新設される」というものでは(必ずしも)なく,従来もあった警報等の中で最も深刻度が高い情報を「特別警報」としてより強い情報として制度的(法的)に明確に位置づけることと私は理解しています.

つまり,たとえば「津波特別警報」のような,従来なかった名称の情報が新たに出されるようになる,という意味ではありません.「またわけのわからんへんてこな情報が増えた」という解釈は,今回の場合は適切ではないと私は考えています.

津波に関しては,大津波警報が「特別警報」として扱われ,火山に関しては噴火警報(レベル4,5)が「特別警報」として扱われることになるのではないかと理解しています.

気象警報については少し事情が変わります.従来ある大雨警報等が「特別警報」として扱われることはなさそうです.大雨や土砂などの気象警報において具体的になにが「特別警報」となるかは,今後「防災気象情報の改善に関する検討会」 goo.gl/gtJYp などで議論されることになるのではないかと予想しています.

いずれにせよ「特別警報」の制度ができたとしても,従来の「警報」の意味が変わることは全くないことに十分な注意が必要です.

つまり,「警報が警告する事態の深刻度が弱くなった」ということは絶対にありません.各機関や個人レベルで,従来,警報が出たら何らかの対応を取っていたやり方(学校を休校にするとか)を変える必要性は全くありません.

「特別警報」に相当する情報が出る頻度は,最も高頻度に出る可能性がある気象警報(大雨や土砂)の場合でも,おそらく,「日本全国のどこかで1年に1,2度出るかどうか」くらいになるとおもいます(記録的な大雨に関する気象情報の頻度から goo.gl/K1r6R ).1市町村を単位とすれば,「今後50年間特別警報未経験」ということもありそうです.

したがって,「特別警報が出るまで様子を見ていればいい」という考え方は全く間違いだと私は思います.特に気象警報においては,特別警報が出るタイミングは,「すでに手遅れ」もしくは「極めて深刻な事態が進行中」であることも多いと思います.「大変なことになっているんだ,認識してくれっ!!!」というのが「特別警報」だと思います.

私自身は,「特別警報」という制度自体には否定的には受け止めていません.つまるところ,「その情報がどう使われるか」ですから.

特別警報ができても,警報が格下げになったのではありません.全く,絶対に,ぜーったいにありませんっっっっ.これから何年間も,何度も何度も,くじけずに,私はこれを言い続けるのでしょうね…

2013年3月 4日 (月)

過去にもあった平地部の吹雪に伴う遭難事例

3月2日から3日にかけて北海道で発生した吹雪に伴う平地部での遭難事例に関して,あまりにも話題になっていないので紹介まで.今回雪に埋まった車中での遭難が発生してしまった北海道中標津町では1933年1月18日に吹雪の中で9人が遭難するという,今回とよく似た事例が発生していることが,宮澤清治「日本気象災害史」に紹介されています.

特に,現・中標津町の養老牛尋常小学校 goo.gl/MnJO2 では,学校からわずか数十mの駅逓所付近へ向かっていた帰宅中の児童4人(うち1名は駅逓所の住民)が,校庭で雪に埋もれて凍死しました.遭難児童の地蔵尊の写真がこちらのブログ goo.gl/vtO9u に紹介されています.この事例について初めて読んだ時,生活圏内どころか,身近な場所の敷地内で遭難してしまっていることに衝撃を覚えました.

私たちの歴史は,いろいろな災害に関わるできごとを経験してきています.まったくあらたなできごとというものは少ないものです.しかし,私たちはなかなか過去の教訓に学べない.

2013年3月 1日 (金)

3月2日研究集会で当研究室関係の発表

3月2日(土),静岡で自然災害科学中部地区研究集会が開催されます. http://goo.gl/yZG5D 当研究室関係者からいくつか興味深い発表が行われますので,順次紹介します.

「テレビ放送における防災情報の伝達状況に関する調査」
○荒川修平(ふじのくに防災フェロー養成講座)、牛山素行(静岡大学防災総合センター)

 全国のテレビ局で防災気象情報をどうに伝えているかの実態調査結果.速報テロップでは,警報や緊急地震速報はほぼすべての局で行われているが,土砂警や記録雨は放送しない局も.特に面白いのは,避難勧告・避難指示を速報テロップで伝えている局は6割程度にとどまるということ.「テレビに注意して避難勧告などの情報を集めましょう」は実は必ずしも期待できないということがわかりました.テレビで防災気象情報がどう伝えられているかの調査はかなり珍しいと思います.

「内水氾濫に対して設定した避難勧告発令基準の検証」
○塩崎竜哉(多治見市役所企画防災課)、牛山素行(静岡大学防災総合センター)

 岐阜県多治見市での2011年台風15号災害時の避難勧告運用実例の紹介.2000年東海豪雨時の教訓を元に,避難勧告の具体的基準が決められており,このために2011年は2000年豪雨時より数時間早く避難勧告を出せたという報告です.単純な話のようですが,「避難勧告基準の具体的効果」が示されることは非常に珍しく, 貴重な報告です.

「原子力災害時の住民避難に関する教訓の分類・整理」
○神村典浩(静岡県危機管理部原子力安全対策課)、牛山素行(静岡大学防災総合センター)

 福島原発事故の教訓(公表されている報告書等)を体系的に整理し,行政機関の部内資料として活用する「教訓集」としてとりまとめる過程を報告するものです.原発事故に限らず,災害時の「教訓」は,断片的なエピソードとして伝えられることは多々ありますが,検索が容易な「辞書」のような整理がなされることはほとんどありません.「教訓集の作り方」を提示しているもので,興味深い報告です.

「避難猶予時間に着目した三陸海岸における東日本大震災津波犠牲者の特徴」
○杉村晃一(静岡市役所上下水道局)、牛山素行(静岡大学防災総合センター)、本間基寛(京都大学防災研究所)、横幕早季(静岡大学防災総合センター)

 静岡市の杉村晃一さんによる「避難猶予時間に着目した三陸海岸における東日本大震災津波犠牲者の特徴」.岩手・宮城県内5市町の津波犠牲者の住所情報を元に,「避難猶予時間」(自宅から高台までの歩行所要時間と津波到達時間の差)を,いくつかの条件下で計算したものです.結果的に「避難猶予時間が0分以下」つまり,時間的にみて逃げ切れなかった人は岩手県内ではほぼ確認できず,地震発生直後(2~5分以内)に避難開始していれば犠牲者の多くは遭難に至らなかった可能性があることが示唆されました.過酷な話ですが,こういう話にも向き合わねば・・・

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