優先対策見極める材料 牛山素行・静岡大准教授に聞く
3月19日付け中日新聞(東海本社版)に下記記事が掲載されました.よくまとめていただいたのですが,ネット上にも,また中日の記事データベースにも掲載されないので,紹介しておきます.
南海トラフ被害想定(経済被害)を受けての私のコメントです.
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優先対策見極める材料 牛山素行・静岡大准教授に聞く
「最新の科学的知見に基づく最大クラスの地震」を前提とした今回の被害想定を、どう受け止めるべきか。静岡大防災総合センター副センター長の牛山泰行准教授(災害情報学)は「大きな数値に踊らされるのではなく、やれる対策をやることに尽きる」と訴える。
-今回の被害想定をどう見ればいいか。
数値はあくまで対策を考えるための目安にすぎない。地震の規模や震源域の評価次第で大きく変わるものであり、それを基に想定される地震や津波が大きくなったからといって、その通りの現象が必ず起きるとか、状況が切迫しているわけではない。被害を軽減するために、どこが弱いかや何をすべきかを確認したり計画したりするための資料だ。
-講ずべき震災対策が必ずしも変わるわけではない、と。
そう。大きい数値が出たから従前の対策が役立たなくなるわけではないし、われわれの社会はこれまで完ぺきに対策を取ってきたわけでもない。これまでに想定されている規模の現象に対してもやらねばならないことは多い。
数値に一喜一憂したり「何もできない」と思考停止になったりしてはならない。被害想定には典型的な被害が挙げられている。数値より起こりうる現象の種類に目を向けるべきだ。ただし、次の災害ではまた新たな課題が顕在化する可能性もあることには注意が必要だ。
-行政はどう対策の優先順位を付けるか。
優先順位は必要。しかし絶対的な正解はなく、行政でなく政治の問題だ。すべて完ぺきに対策を取るのは無理だし、その点は社会的にも認めるべきだ。今回の被害想定は、それぞれ被害の大小関係を比べ、対策の優先度を見極める判断材料の一つになる。
-原発事故は考慮に入れられなかった。
今の段階では仕方がない。種類が違いすぎる。原発事故は地震がなくても起こりうる。今後時間をかけて、それぞれ被害を評価した上で重ね合わせていくしかないのではないか。東京電力福島第一原発事故を教訓にすると称して今回の被害想定に盛り込んだとしても、それは一つの特定ケースの想定にすぎない。
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