居住地の災害に対する危険性の認知に関するアンケート集計
伊豆大島豪雨災害を経て,土砂災害の危険箇所についての関心が高まっていると思われる.地域での防災を考える上では,まずは居住地の災害に対する危険性を知ることが重要,ということは筆者が以前からよく指摘しているところである.ハザードマップ等の形で危険箇所の公開も進んでいるところだが,なかなかその情報の認知は進んでいない.
今年3月,筆者は「防災気象情報に関するアンケート」を行っている.
http://www.disaster-i.net/notes/130422report.pdf
http://www.disaster-i.net/notes/20130422p.pdf
この回答者は,それぞれ居住地の郵便番号情報を属性として持っている.そこで,郵便番号を元に,居住地が浸水想定区域に含まれるか,また,居住地付近に土石流危険渓流等の土砂災害危険箇所が存在するかを調べ,居住地の洪水,土砂災害にの危険性に対する認識との関係を検討した.郵便番号については,面情報が得られなかったため,住所からアドレスマッチングにより代表点の緯度経度を求め,点情報として用いた.浸水想定区域については,この代表点が浸水想定区域内にある場合を「浸水想定区域内の居住者」と見なした.土砂災害については,代表点を中心とした直径0.5km以内に土石流危険渓流,急傾斜地崩壊危険箇所,地すべり危険箇所などが存在する場合を「土砂災害危険箇所付近の居住者」と見なした.土砂災害警戒区域についての位置情報が得られていないため,検討対象としていない.
3月の調査は盛岡市,静岡市,名古屋市の住民を対象としたが,まず静岡市在住者186人を対象とした.
「あなたがお住まいの地区は、次に挙げるような災害に対して安全だと思いますか(大雨・洪水)」に対する回答を,「浸水想定区域内の居住者」と「その他」に分類して集計した結果が上図である.「浸水想定区域内の居住者」と「その他」の間で,「危険」または「やや危険」を選択した回答者の比率にほとんど違いはなく,いずれも3~4割にとどまる.つまり,「浸水想定区域内の居住者」であっても,居住地が浸水に対して危険であることを,危険性の低い地域に比べ特段強く認知していないことになる.
「あなたがお住まいの地区は、次に挙げるような災害に対して安全だと思いますか(
がけ崩れ・土石流)」については,「土砂災害危険箇所付近の居住者」が27人と少ないため,あまりはっきりしたことは言えないが,「土砂災害危険箇所付近の居住者」と「その他」の間で,「危険」または「やや危険」を選択した回答者の比率にほとんど違いはなく,その率も低い傾向は,「大雨・洪水」と同様である.
ごく限定的なデータから予察的に行った集計であることには注意が必要であるが,居住地の災害に対する危険性がなかなか認識されていない可能性が示唆されている.
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