土砂災害警戒情報が出たのに避難勧告を出さなかったことは「けしからん」ことではない
最近の大雨事例で,「土砂災害警戒情報が出たのに避難勧告を出さなかった!,けしからん」といった論調が一部に見られるが,適切でないように思われる.
内閣府「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」 http://goo.gl/49mUIR では,避難勧告の判断に様々な情報を活用してほしい,と促しているが,この「ガイドライン」を通じて,「土砂災害警戒情報が出たら避難勧告を出すこと」という「ルール」を決めているわけでは断じてない.「ガイドライン」で「何それ情報が出たらこれこれせよ」という「ルール」が決まったととらえられるのだとすれば,これは本末転倒である.
「ガイドライン」の文言をそのまま引用すると,たとえば土砂災害警戒情報は「避難勧告の発令の判断材料とする」,となる.言うなれば,「土砂災害警戒情報が出たら避難勧告を出すかどうか考えてくれないかなあ」,という話である.参考にすべき情報を挙げるから,個別具体的な対応方法を各地域で考えてほしい,というのがこの「ガイドライン」趣旨だと私は理解している.
「土砂災害警戒情報も出ていたのだから避難勧告すべきだった」といった趣旨の論評が出ると,しばしば「いや,あのときはああでこうで,だから避難勧告はしなかった」的な「反応」が行政機関などからが出てくることがある.このことは特におかしなことだと思わない.むしろ,「あのときは,ああでこうで,だから避難勧告しなかった」という情報を詳細かつ堂々と提示することが重要だと思う.それは「言い訳」ではなくて「貴重な教訓情報」である.だけど行政機関がそれを言いにくいという「空気」が強いことは現実であり,大変不幸なことだと思う.
報道で出てくる行政機関の発言としての「避難勧告をしなかった理由」は,切り取られて本質を伝えていないことが少なくない.だからマスコミはだめだ,ということではなくて,限られたスペース・時間で伝えなければならないメディアの事情を考えれば,そういうものだと思って情報受信者側が理解するものだと思う.
ただ,今や情報発信手段はマスコミだけではないのだから,「避難勧告をしなかった理由」の詳細を,行政機関が資料として公表することは可能だろうと思う.それを「いいわけ」とかいう人たちがいるだろうけど,できれば行政機関も堂々と反論や詳細情報を発信してほしいし,そういう動きはぜひ応援したいと思う.
« 国土地理院の避難所記号についての意見募集について思うこと | トップページ | 土砂災害時の避難で「前兆現象」に頼ることは危うい »
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 2021年 新年のご挨拶(2021.01.01)
- 水害時 避難イコール避難所Go! だけ,ではない(2020.04.07)
- 時評=災害教訓に学ぶ難しさ 多くの事例収集重要(2019.09.30)
- 時評=大雨の際の避難行動 流れる水に近づくな(2019.07.31)
- 「大雨警戒レベル」に関する補足的なメモ(2019.06.03)