居住地の風水害の危険性に対する住民の認識について
広島での土砂災害を経て,土砂災害警戒区域など,地域の災害特性を示すハザードマップ的情報に対する関心が高まっているように思えます.土砂災害警戒情報,洪水の浸水想定区域などの情報は,ハザードマップなどの形で公開が進んでいます.しかし,自分の居住地でどのような災害の危険があるかについての理解は,必ずしも進んでいない可能性があります.
このことについて,昨年末に調査した結果が論文としてまとまり,その概要を9月24-25日に鹿児島大学で開催される日本自然災害学会で発表予定です.当該論文の校正原稿を公開します.
牛山素行:大雨特別警報に対する洪水浸水想定区域付近の住民の認識,自然災害科学,特別号,(掲載決定),2014.
ここで報告した調査は,土砂災害警戒区域ではなく洪水の浸水想定区域ですが,土砂災害警戒区域に対する認識と共通するところはあるのではないかと思います.調査対象は,昨年9月に大雨特別警報が発表された京都府,滋賀県,福井県の在住者のうち,浸水想定区域及びその周辺に居住している人です.詳しくは論文をご覧いただければと思いますが,下記のような結果が得られています.
- 居住地の洪水災害に対する危険性について,危険側の選択肢(「危険」または「やや危険」)を選択した回答者は2 ~ 3 割程度で,自宅が大雨の際に浸水する可能性について,危険側の選択肢(「可能性は非常に高い」または「可能性は高い」)を選択した回答者は1 ~ 2 割。
- 浸水の危険性について,危険側の選択肢を選択した回答者は,9 月16 日の大雨特別警報発表時の対応行動や,今後の大雨特別警報発表時の対応意向について,安全側の回答者に比べると対応がやや積極的である傾向がみられた。
居住地の危険性を理解することの重要性が示唆されますが,危険だと考えている人とそうでない人の差はそれほど大きいものではありません.「危険だと知らされていれば被害を減らせたのではないか」と考えたくはなるでしょうが,知られてさえいればよかったとまでは言えないように思われます.
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