防災人材育成カリキュラムとハザード教育
9月8日,内閣府主催の「防災スペシャリスト養成研修」 http://goo.gl/iyU4aK で「風水害メカニズム」という講義を行いました.牛山が風水害メカニズムを教えられるのか,というご批判はありそうですが・・・
ハザード関係(地震,気象などのメカニズム)が専門の方が防災スペシャリスト養成研修 http://goo.gl/iyU4aK のカリキュラムを見ると,違和感があるかもしれません.ハザード(自然科学的な話)がほとんどないじゃないか,という.
しかし,この研修のカリキュラムを考える過程の,内閣府「防災スペシャリスト養成研修」企画検討会 http://goo.gl/9X0V1v でもいろいろな議論があって,今後カリキュラムが見直されても,たぶんハザードの話は減ることはあっても,増えることはないと思います.防災の実務的な研修の場において,限られた時間内でどの話題を取り上げるかとなると,自然科学的な話の重要度は必ずしも高くない,ということになることは否定できません.
無論,ハザードがまるきり軽視されているわけではなく,ハザード(自然科学的な話)については,e-ラーニングで代替しやすいのでは,という見方もあります.受講者を集めての講義の時間はどうしても限られるわけで,代替手段があるのならば,まあ,やむを得ないかなと思っています.
講義内容などについていろいろ意見は分かれるかもしれませんが,「防災スペシャリスト養成研修」という形で,国自身が自治体等の防災実務者をトレーニングする機会を構築したことはとても意義があると思っています.
静岡大学で行っている防災フェロー養成講座 http://goo.gl/bGJ6e も,防災実務者を主対象としています.この講座では,ハザード寄りの話の方がどちらかというと多くなっています.防災フェロー養成講座で,自然科学的な話が多いことは,受講生には必ずしも不評ではないのですが,こうしたプロジェクトを評価する側の,防災を専門としない方々からは著しく評判が悪いのが実情です.「防災人材育成は理系の座学なんかやっていないでもっと実践的なことをやるべし」などといったご批判をいただきます.防災フェロー養成講座では,地学の野外巡検とか,地震計を使っての計測実習とか,社会調査演習とか,地域調査演習とかをやっているのですが,そういうのはみんな「非実践的な座学」のように受け止められてしまうようです.
防災教育(人材育成)に,ハザード・自然科学の話はほんのちょっとでいい,という考え方の正否は何とも言えませんが,「社会」に近い側の考え方はどちらかと言えばそれに近いらしい,というのが現実なのかな,と思います.「防災のためには国民全員が自然科学的基礎を養うべきだ」などとどなっても,社会は受け入れてはくれないでしょう.どうしたらよいのか,いろいろな試行錯誤が必要だと思います.
内閣府「防災スペシャリスト養成研修」も,けっしてこの研修カリキュラムだけに統合されていくべしという話になっているわけではありません.研修主体などによってそれぞれ特色を持った研修があることは悪い話ではありません.いろいろな機会を用意することが重要だと思います.
« 奈良県の土砂災害危険個所を参照する方法 | トップページ | 広島市検証部会・毎日新聞報道より »
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 2021年 新年のご挨拶(2021.01.01)
- 水害時 避難イコール避難所Go! だけ,ではない(2020.04.07)
- 時評=災害教訓に学ぶ難しさ 多くの事例収集重要(2019.09.30)
- 時評=大雨の際の避難行動 流れる水に近づくな(2019.07.31)
- 「大雨警戒レベル」に関する補足的なメモ(2019.06.03)