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2015年7月 3日 (金)

豪雨災害 犠牲減らすには-実態把握して対策を

 7月2日付け静岡新聞「時評」欄に掲載された筆者の寄稿記事です.至る所で紹介している,当方で行っている豪雨災害時の人的被害に関する研究成果の概説ですが,「時評」ではこれまで書いたことが無く,時期も時期ですので,取り上げてみました.
 
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豪雨災害 犠牲減らすには-実態把握して対策を
 
 今年も出水期(しゅっすいき)がやってきた.出水期とは,河川が増水しやすい時期のことで,一般的には前線や台風などの影響で雨が降りやすい6~10月頃を指す.河川が増水するときは,多量の雨が降るときであり,このようなときは土砂災害も懸念される.出水期は,洪水,土砂災害といった,いわゆる豪雨災害に注意が必要な時期である.
 
 豪雨災害時の被害にも様々なものがあるが,最も深刻なのは死者などの人的被害だろう.豪雨災害時にどのような犠牲者が生じているのか,実はあまり明らかになっていない.本稿では筆者が行った2004~2014年の豪雨災害による全国の犠牲者712人の集計結果から考えてみたい.
 
 まず犠牲者が生じた原因となった現象は,「土砂災害」が49%と最も多く,以下「洪水」18%,「河川」19%,「強風」6%,「高波」3%などとなる.ここで「洪水」とは川からあふれた水で犠牲者が生じたケースであり,「河川」とは,用水路の見回りや,川沿いの道を通行するなど,増水した川に近づいて亡くなったケースである.大雨でも川があふれていなければ大丈夫,という訳ではないことが示唆される.
 
 犠牲者の遭難場所を大別すると,「屋内」51%,「屋外」48%となる.原因となった現象別に見ると,「土砂災害」のみは「屋内」が大多数(87%)だが,他の現象では「屋外」が多数を占める.自宅などにいる人が避難することで犠牲者を減少させることが期待できるのは主に土砂災害で,他の現象については,むしろ激しい現象が発生している際に屋外で無理な行動をとらないことが重要であることが示唆される.
 
 犠牲者の年代を見ると,65歳以上が犠牲者全体の54%を占める.高齢化が進んだとはいえ,2010年の国勢調査で65歳以上の人口比は23%であり,豪雨災害の犠牲者は高齢者の比率が高い.しかし,日頃から介護が必要だったなど,いわゆる「避難行動要支援者」と思われる犠牲者は全犠牲者の4%ほどである.日常生活には特に支障の無い高齢者にも注意を向けなければ,高齢者への被害集中の改善は期待できない可能性がある.
 
 豪雨災害の犠牲者発生状況を精査すると,何となくイメージされる犠牲者像と実態の乖離に気づかされる.被害軽減のためには,実態を把握した上での対策が重要だろう.

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