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2015年10月 3日 (土)

御嶽山噴火1年で信濃毎日新聞が遺族の方などにアンケート

御嶽山の噴火から1年が経過したなかで,信濃毎日新聞が遺族の方と,噴火当時山頂にいて助かった方を対象にアンケート調査をしたことが9月27日付け紙面で報じられている.なかなか興味深い結果が出ていると思う. http://goo.gl/TYiMaI

 
電子版には掲載されていないが,紙面では当方の下記のようなコメントが掲載された.相変わらず上から目線でエラそうで,人の心のわからない学識者である.
 
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<自ら情報取ることも重要>
 
 牛山素行・静岡大防災総合センター教授(災害情報学)=諏訪市出身=の話
 
 アンケート結果では、火山の観測、監視や情報伝達の体制整備に期待が寄せられている。これらの対策を進めていくことは重要だ。
 
 しかし、現在の科学技術の範囲内で最大限に整備したとしても、昨年の御嶽山噴火の被害を完全に防ぐことは難しかっただろう。
 
 火山に限らず、災害に関わる情報は、誰かが「知らせてくれる」のを待つのではなく、自ら取りに行くことも重要になる。身近に存在したり、訪れたりする山については、私たち皆がどの山が活火山であるかをあらかじめ知っておく必要があると考えている。
 
 噴火を完璧に予知することは難しいが、火山活動に変化があれば情報が出ている場合があり、火山の近くで暮らす住民や登山者は、こうした情報に注意を払いたい。
 
(2015/9/27信濃毎日新聞)

静岡県内市町防災担当者に静岡新聞がアンケート

10月3日付け静岡新聞,県内市町にアンケート調査「大雨時避難発令の判断「不安」9割 静岡県内市町の防災担当者」 http://goo.gl/X5UXEe 関連記事として「危機感、住民に届かず 9月の浜松・大雨避難指示」 http://goo.gl/xiTaS8
 
後者の記事には,当研究室関係者で防災フェローの,浜松市小林正人さんが登場.電子版にはないけど,紙面ではこれら記事の横に私のコメントが,下記のように掲載されていた.
 
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9月中旬に鬼怒川が氾濫した茨城県常総市の現場を視察した牛山素行静岡大防災総合センター教授(災害情報学)に、避難勧告などの判断・伝達に関する課題を聞いた。
 
 -常総市の教訓は。
 
 「常総市は危険度の高い箇所から優先的に避難勧告などを発令しようと試み、結果的に最も被害が大きかった地区に避難指示を出せなかった。対象区域の単位を細かくしすぎては適切とは言えない。浸水想定区域や土砂災害警戒区域などを基に、各市町が実現可能な単位で対応することが大事」
 
 -「早めの判断」に何が必要か。
 
 「“空振り”にも妥当性が必要。各市町で過去のデータを検討し、気象・防災情報に基づく量的基準を決めておくことも重要。『年に1度くらいの空振り』は、われわれも受け入れていいのでは」
 
 -垂直避難は有効か。住民の理解は十分か。
 
 「常総市でも致命的な影響を受けた家屋は限定的。浸水が始まった後で外へ避難するより、屋内にとどまった方が安全な場合は多い。住民自身が居住地の危険性を事前から把握し、どういう避難行動を取ったらいいか決めておく必要がある。全国統一的な基準ではなく、各市町で地域ごとに、行政と住民の間で防災情報についての共通理解を形成しておくことが重要だ」
(2015/10/3静岡新聞)

2015年10月 1日 (木)

案外奥が深い「降水量」 捉えにくい「激しさ」

9月17日付け静岡新聞「時評」欄に掲載された筆者の寄稿記事です.台風18号が日本に接近中,浜松付近の浸水災害が起こる前日,鬼怒川の破堤氾濫が発生する前々日頃に執筆した原稿です.この直前までの,今年の豪雨災害の「少なさ」にかえって恐怖を感じて書いたものでした.やはり,雨は侮れません.
 
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時評 案外奥が深い「降水量」 捉えにくい「激しさ」
 
 天気予報や各種気象情報で毎日のように聞く言葉に「降水量」がある.当たり前のように使っている言葉だが,これが案外難しい.
 
 地面に降った水が、しみこんだり,流れたりせずに,そのまま地面に溜まったとした場合の水の深さをmm(ミリメートル)単位で計ったものを降水量という.貯まった水の体積や容積を測るものではない.雪などの固体で降った場合は、それを溶かした水の深さを測ることになる.雨量という言葉もよく使われる.降水量という場合は雪なども含めたものであり,雨量というのは液体の水で降ってきたもののみを指すが,厳密には使い分けられていない.専門的には主に降水量という.
 
 降水量は,その値が示されても,その値の「激しさ」をとらえにくいのではなかろうか.気象庁の「雨の強さと降り方」という表によれば,1時間降水量20~30mm程度で「強い雨(どしゃ降り)」であり,地面一面に水たまりができる,車のワイパーを速くしても見づらいといった状態になる.この表で最も大きな値は80mm以上で,「猛烈な雨」とされ,「水しぶきであたり一面が白っぽくなり視界が悪くなる」という状態である.
 
 ただし,降水量の「激しさ」は1時間降水量だけでは表現できない.しばらく雨が降っていない状況下で「猛烈な雨」が降っても1時間程度でやめば,家屋の倒壊や多数の犠牲者発生といった大きな被害につながることはまずない.しかし,弱い雨が降り続いた後で「猛烈な雨」が降る,「猛烈な雨」が数時間続けて降るなどすれば大きな被害につながる可能性が高い.
 
 雨による深刻な被害は,どちらかといえば1日などのまとまった時間の降水量の方が目安としては使いやすい.では,1日の降水量がどの程度になれば要注意なのか.これは地域によって「何倍」という単位で異なり,数字を挙げることが難しい.一つの目安としては,その地域で過去に記録された最大値を見る方法がある.
 
 たとえば1日の降水量について共通の統計がある1976年以降で県内各地の最大値を見ると,静岡は368mmだが,伊豆の天城山では627mmである.一方,西部ではやや値が小さく浜松では223mmである.あくまでも簡単な目安だが,それぞれの地域でこれらの値を大きく超える雨が降れば,災害に結びつく可能性がある.
 
 過去の降水量記録は気象庁ホームページで確認できる.現在の降水量もネット上の各種気象関係のページのほか,テレビのデータ放送でも読み取れる.よく聞くけど案外奥が深い「降水量」について,時には考えてみてはいかがだろうか.

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