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2016年6月29日 (水)

改めて考える地震対策-耐震が一丁目一番地

6月25日付け静岡新聞「時評」欄に掲載された筆者の寄稿記事です.繰り返し指摘されていることですが,人的被害(最も深刻な被害)は明らかに古い家屋に集中しています.
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 「平成28年熊本地震」発生から約2ヶ月.この間に3回ほど現地を調査で訪れた.地震は私にとって専門外の現象でもあり,いろいろと知らなかったことにも出会った.この地震では,地震そのものによる直接死者・行方不明者が50人に上った.避難生活などに伴う関連死者数はまだ流動的だが,6月14日静岡新聞朝刊では関連死疑いが20人とも伝えられる.
 
 死者・行方不明者が50人以上となった自然災害は,1980年代以降でも本事例を含めて15事例,仮に70人以上では11事例である.50人以上の被害となったことは大変痛ましいが,決して「未曾有」ではなく繰り返し発生している規模だ.日本が厳しい自然環境下にあることにあらためて愕然とさせられる.
 
 現地を見て最も印象的なことは,すでに多く伝えられてはいるが,「激しく倒壊しているのは主に古い家屋である」だった.比較的新しい家屋の倒壊,損壊も見られたが,大局的には古い家屋の被害の方が目立った.
 
 筆者は今回の地震による犠牲者発生状況の調査を進めているが,地震による建物等倒壊に伴って亡くなった方は38人で,そのうち所在家屋が現在の耐震基準とおおむね同等の1980年代半ば以降の新築だった可能性が高いのは今のところ2人(1世帯)である.犠牲者は明らかに古い家屋に集中している.
 
 4月14日の「前震」があり,その直後は避難したが「もう大丈夫だろう」と考え16日夜は自宅に戻り,「本震」で亡くなったことが伝えられている.確かにそうしたケースも少なくないが,ほとんどが古い家屋での犠牲者だったことを考えると,「もう大丈夫だろう」という判断によって厳しい結果となったというよりは,そもそも家屋自体に主な原因があったと考えた方がいいのかもしれない.
 
 いくら一生懸命避難袋を作り,サバイバル知識を身につけ,緻密な津波避難訓練をしていても,古い家屋に居住し地震発生とともに建物倒壊で命を失っては,それらの「備え」は何の役にも立たない.耐震化の支援策も様々用意されている.賃貸であれば「比較的新しい家屋を選ぶ」ことも立派な対策となる.地震対策の一丁目一番地は耐震化である,とあらためて考えている.

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