2017/7/8福岡県朝倉市付近現地踏査雑感
7月8日午後,福岡県朝倉市内の豪雨災害被災地を現地踏査.移動区間は朝倉市比良松付近から同市杷木林田付近までの国道386号線沿い及び周辺の山麓部.以下,現地を見ての雑感.短時間での印象なので不正確な点もありうる.
なお,主な写真と撮影位置図などは2017年7月8日福岡県朝倉市付近現地踏査写真に整理してある.
テレビ報道でもよく流れていた比良松中学校の建物の被害.治水地形分類図で見ると校舎敷地は台地上.河道の側岸浸食により建物の基礎地盤部分が流失した模様. pic.twitter.com/3RRU4J9aLo
比良松中学校付近では,橋の取り付け道路部が流失した被害も見られた.橋も損壊しているが,道路部分は完全に流失.橋が残っているために,誤って車が転落するなどの被害に繋がりやすい形態.2016年北海道の豪雨では3箇所で3人が同形態で死亡している. pic.twitter.com/qSN3RdJxHS
筑後川右岸側では,各支流から大量の洪水流が流れ込み,低地部全体を流下したような印象.水だけでなく,多量の土砂が運ばれて堆積している.低地部に堆積している土砂の粒径は細かく,レキと言えるようなものはほとんど見られない(当たり前だけど).
朝倉市山田地区.洪水流により家屋が流失し,人的被害が生じた付近.氾濫平野部分全体を洪水流が流れている.上流でため池が決壊したが,その下流にもう一つため池がありそれは決壊していない. pic.twitter.com/uP5XT8HeUp
山田地区の家屋流失とため池決壊の関係はよくわからないが,豪雨によるため池決壊自体は珍しいことではない.写真は2013年7月の豪雨による山口県萩市須佐でのため池決壊事例. pic.twitter.com/ACbGZamD0a
ただし,豪雨時のため池決壊近傍での家屋流失による人的被害事例は少なく,2004年以降では2004年10月台風23号豪雨時の,兵庫県洲本市上内膳での1箇所2人があるくらいか. pic.twitter.com/38rO6xPO90
朝倉市山田地区のため池決壊現場.並んで大小2つのため池があり,いずれも決壊している模様.goo.gl/nizkSN なお,この地点の下流側に別のため池があり,これは決壊していない.
朝倉市杷木林田付近では,河道の位置が大きく変わり,水田だった部分が河道に.これ自体は珍しくはないが,河道だった部分に地盤高(河床ではない)+1~2mの土砂が堆積し完全に埋め尽くされていたのがあまり見ない光景だった. goo.gl/UEMqzP pic.twitter.com/gFbmk52axw
杷木林田の河道位置が変わりはじめた地点 goo.gl/smdusM これまでの河道や道路の部分にうずたかく土砂が堆積し,今まさに自然堤防を形成する河川の活動が生じたのだ,と感じさせられた.もっともこれは,防災上はどうでもよい話とは思うが.私は『地学的知識』をみんなが持つことが,防災(被害軽減)に直結する一丁目1番地だとは思っていないので. pic.twitter.com/DRgBI3xIES
河道位置が変わった朝倉市杷木林田付近で家屋流失したらしい箇所 goo.gl/smEVvP 家屋周辺に土砂は1-2mほど堆積しているが堆積しただけでは家屋倒壊となりにくい(継続使用は困難かもしれないが).家屋流失は新たな河道となった箇所に限られそう. pic.twitter.com/Mt7D8f6Fny
見た範囲では氾濫平野部が浸水し,台地上は洪水の影響をほとんど受けていない.ただし治水地形分類図で扇状地と描かれている部分も浸水しているケースが見られた印象.基本的には地形的に起こりうるところで起こりうる現象が起こっている.
地形が被害に影響している例.杷木インター付近の国道386号 goo.gl/TwUwKq 道路は手前の台地側から氾濫平野に向かって下っており,氾濫平野部分で浸水や土砂の堆積が生じているようにみえる. pic.twitter.com/qmAX8oVS1c
洪水ハザードマップ整備が進みにくい山地の中小河川での災害危険性を知る上では,地形分類図(というか中学理科社会の地形の知識?)が有効であることをあらためて感じた.地形分類図は見方に難しいところがあり,災害情報として万人に「使ってください」とは言いにくいけど.
ちょっとわかりにくい写真だが,杷木インター付近の北側斜面では,斜面の至る所で崩壊が生じているような場所もあった.ただし,こういった状況が朝倉市一帯に見られているわけではない.より山間部の状況は不明.崩壊面積は広いが浅い崩壊がほとんどのような印象.このあたりは今後出てくる航空写真で明瞭になるでしょう. pic.twitter.com/BgB6FsX6jc
現地を見てあらためて,山地河川の洪水は怖いなと.去年の岩泉と共通する印象.もっとしつこく「山地河川の洪水は怖いよ,豪雨時に山地河川の脇からは少しでも離れようよ」ともっとしつこく言っておけばよかった,と悔やんだ.写真は2016年台風10号災害時の岩手県岩泉町安家地区. pic.twitter.com/BI6zuHiYyr
ハザードマッブで浸水想定区域や土砂災害警戒区域と示されていない場合でも「川と同じくらいの高さにある場所」は,浸水などの被害を受け得る.「川と同じくらいの高さ」とは普段の水面の高さではなくて,水面に向かってへこみはじめたところの高さのこと.絵が下手ですみません. pic.twitter.com/wMBVgCfKjR
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