朝倉市・日田市の流失家屋等の位置と地形の関係を判読
昨日,国土地理院の空中写真 https://goo.gl/r9qEg1 から,今回の九州北部での豪雨による朝倉市赤谷川流域の家屋の流失,倒壊状況を判読した.
朝倉市・日田市付近の流失家屋等の写真判読
ここで判読した「流失」の住家等44箇所,「変形」11箇所の計55箇所について,その位置がどのような地形があるかを検討した.用いたのは,5万分の1都道府県土地分類基本調査の地形分類図「吉井」(福岡県版),「吉井」(大分県版)である.なお,今回の被害が大きかった地域では,国土地理院刊行の土地条件図,治水地形分類図,都市圏活断層図は未整備で,地形分類図的なものとしては土地分類基本調査によるもののみである.
地形分類図が5万分の1と,空間分解能がやや低いため,国土地理院(地理院地図)の地形図及び陰影起伏図を合わせて参照した.地形分類図,地形図,陰影起伏図と,「流失」「変形」家屋の位置を,目視により比較し,牛山の判断で地形を判読した.なお,筆者は地形学の専門家ではないので,判読は厳密なものではない.「流失」「変形」家屋位置の図示例を下記に示す.
判読の結果,洪水に起因すると思われる42箇所は,すべて低地(いずれも谷底平野)に所在し,山地,台地と判読された箇所は見られなかった.土砂に起因すると思われる13箇所は,山地9箇所,台地2箇所,低地2箇所だった.
航空写真と地形分類図を用いた,図上判読だけであり,被害程度,場所,原因外力,地形ともに曖昧な部分が多いと思われる.しかし,大局的には今回の豪雨により,家屋が流失するような大きな被害箇所の多くは,山地河川洪水に起因するものと思われ,それらの箇所の地形はほぼ低地(いずれも谷底平野)だった可能性が高い.
これは,「流失」「変形」家屋はほぼすべて,「予想もつかないような場所」で発生したのではなく,「地形的に起こりうる場所」で発生したことを意味する.
山地河川では,洪水の浸水想定区域の設定が進みにくい面があり,ハザードマップ上「安全だ」と思い込まれやすい危険性がある.こうした課題への対応策の一つとして,地形分類図の活用は可能性があるかと思われる.しかし,地形分類図は作成地域や作成者により内容が異なりやすいなどの特性があり,広く利用するには課題が多いことは強く注記しておかねばならない.
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