2017年7月九州北部豪雨

2017年8月31日 (木)

2017/8/28朝倉市付近現地踏査雑感

8月28日の朝倉市内現地踏査から.朝倉市杷木松末・石詰集落と中村集落の中間付近 https://goo.gl/Tacmm6 から両集落を見る.両集落では,人口116人(2010年国勢調査)の集落で二十数カ所の住家が流失した.石詰,中村集落のある乙石川流域は,7月下旬の調査時には接近困難だった.この付近では啓開すべき道路すらなくなり,やや高いところに新設の仮道が作られていた.

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上記の写真から0.7kmほど上流,朝倉市杷木松末・中村集落付近.だいたいこのあたり.https://goo.gl/qGfhrY ここから上流約0.8kmほどのところに乙石集落があるが,ここから上はまだ仮道も開設されていなかった.

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朝倉市杷木林田付近,だいたいこのあたり https://goo.gl/toHuA9 の赤谷川「7月5日以前の河道(橋が埋まってる)」と「現在の実質的な河道」.なんというか,このまま現河道が下刻して,実質的な河道になっていくことになるのではなかろうか.

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2017年8月16日 (水)

「平成29年7月九州北部豪雨」現地調査速報会(8/24東京・日本気象協会)

静岡大学防災総合センター牛山研究室では,「平成29年7月九州北部豪雨」による災害に関し,一般財団法人日本気象協会と合同で現地調査を行いました.去る8月7日に調査速報会を実施する予定でしたが,台風5号の影響により中止していました.このたび,8月24日にあらためて実施することとなりましたので,ご案内します.
 
「平成29年7月九州北部豪雨」現地調査速報会
 
■概要
  • 日時:平成29年8月24日(木) 14:00~16:00 (開場13:30)
  • 場所:一般財団法人日本気象協会 第1・2会議室(東京都豊島区東池袋3-1-1 サンシャイン60・55階)
  • 定員:先着50名程度
  • 参加費:無料
■内容
  • 気象メカニズムの解説、現地調査結果の報告(仮) (日本気象協会  30分程度)
  • 平成29年7月九州北部豪雨による人的被害発生状況・発生場所の特徴(静岡大学防災総合センター牛山素行教授  60分程度)
■申込
下記の申込用紙(Wordファイル)の内容をご確認ください.準備の都合上、8月22日(火)までにお申し込みくださいとのことです.

2017年8月 4日 (金)

「平成29年7月九州北部豪雨による災害・現地調査速報会」資料を公開

静岡大学防災総合センターでは,8月4日に「平成29年7月九州北部豪雨による災害・現地調査速報会」を実施しました.速報会で,牛山が使用したスライドの抜粋・縮刷を公表しました.

平成29年7月九州北部豪雨による人的被害発生状況・発生場所の特徴(速報)

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なお,本災害に関しての各種資料は,下記に整理しています.
 
2017年7月5日の九州北部の豪雨による災害に関するメモ

8月7日の東京での速報会は中止となりました

過日当方よりお知らせしました,
「平成29年7月九州北部豪雨」現地調査速報会(東京・日本気象協会)
ですが,台風の影響により中止となりました.日本気象協会からの案内文を転載させていただきます.
 
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2017 年 8月 4日
一般財団法人 日本気象協会
「平成 29 年 7月九州北部豪雨」現地調査速報会 (8月 7日 13 時~)
中止のお知らせ
 
過日、ご案内差し上げました、<「平成29年7月九州北部豪雨」現地調査速報会の開催に関するご案内>につきまして、台風5号による被災地への影響を鑑み、急遽開催を中止することに致しました。
 
急な予定変更となりましたことをお詫び申し上げます。
 
なお、本調査速報会の次回開催日程は未定です。後日開催する場合は改めて日程をご案内させていただきます。ご不明点等は大変お手数ではありますが、下記までご連絡下さいますよう、よろしくお願い申し上げます。
 
【お問い合わせ先】
一般財団法人 日本気象協会
防災ソリューション事業部 営業課 担当:小野
Tel 03-5958-8143 / FAX 03-5958-8157
メール: eigyou_bosai@jwa.or.jp

2017年7月31日 (月)

「平成29年7月九州北部豪雨」現地調査速報会(東京・日本気象協会)

静岡大学防災総合センター牛山研究室では,「平成29年7月九州北部豪雨」による災害に関し,一般財団法人日本気象協会と合同で現地調査を行いました.このたび,同協会において,調査速報会を開催することとなりましたので,ご案内します.
 
「平成29年7月九州北部豪雨」現地調査速報会
■概要
  • 日時:平成29年8月7日(月) 13:00~15:00 (開場12:30)
  • 場所:一般財団法人日本気象協会 第1・2会議室(東京都豊島区東池袋3-1-1 サンシャイン60・55階)
  • 定員:先着50名程度
  • 参加費:無料
■内容
  1. 気象メカニズムの解説、現地調査結果の報告(仮) (日本気象協会  30分程度)
  2. 平成29年7月九州北部豪雨による人的被害発生状況・発生場所の特徴(静岡大学防災総合センター牛山素行教授  60分程度)
■申込
下記の申込用紙(Wordファイル)の内容をご確認ください.準備の都合上、8月3日(木)までにお申し込みくださいとのことです.

「20170807.docx」をダウンロード

なお,すでにご案内していますように,同趣旨の速報会を,8月4日(金)に静岡市内でも実施予定です.
 
「平成29年7月九州北部豪雨による災害・現地調査速報会」のお知らせ

2017年7月24日 (月)

2017/7/22朝倉市付近現地踏査雑感

7/22の現地踏査から.先週大量の人や車両が溢れていた朝倉市杷木星丸付近は少し静かになったような印象.https://goo.gl/RQjcjq から上流側を見る.この視界内で少なくとも住家5~6箇所が流失.5箇所が流失した市営住宅は右手建物の後方.

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朝倉市杷木松末.位置図→ https://goo.gl/6xK6ck 赤谷川と乙石川の合流部付近の被害.住家3箇所が基礎地盤から完全に流失し,人的被害も生じている.後方の台地部分も侵食しているのでは.河道沿いの谷底平野部分とは言え,激しい被害.

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朝倉市杷木白木.位置図→ https://goo.gl/35GRfD 赤谷川の1本西側の小流域,白木谷川の最上流域の集落.河道沿いの住家6箇所が流失し,人的被害も生じている.土石流から洪水流に変わるあたりか.

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朝倉市杷木古賀.位置図→ https://goo.gl/H2FdS7 白木谷川の1本西側の寒水川流域上流側.流域内で住家3箇所と神社(この場所ではない)が流失.谷底平野で被害.「神社は安全」みたいな「雑で心地よい話」が私は嫌.神社にもいろいろ歴史的経緯あるでしょう.地形分類図で見るとこの神社は谷底平野(山麓の扇状地)だったので,あまり安全とは.

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2017年九州北部豪雨の災害で、最も集中的な家屋被害が生じたのは,朝倉市杷木松末の一部で,赤谷川支流の乙石川流域,石詰,中村集落ではなかろうか.川沿いにあった集落のほとんどが流失したように見える.

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写真は7/22撮影の同川最下流部,位置図→ https://goo.gl/EoYmZU なお,乙石川最上流部の乙石集落は,国土地理院の空中写真では雲がかかって見えないので,家屋被害状況はよくわからない.

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2017年7月九州北部豪雨災害では「流失」家屋が多い印象

2017年7月九州北部豪雨による災害は,人的被害もまとまった規模となりつつあるだけではなくて,家屋被害も,総数では例えば何万棟単位などにはならないように思うけど,流失・倒壊といった程度の激しい「全壊」家屋が多いような印象を,空中写真判読や現地踏査から感じる.
 
近年の災害統計では一般的に「流失」という値は出てこない(昔はあった).「全壊」といっても完全に倒壊しているようなケースはごくわずかで,概観上損壊していないように見えても継続使用困難なものなども「全壊」となる.
 
当初「床上浸水」と判断されたものが後日「全壊」「半壊」に判定が変わるケースは非常によくある.家屋被害数は発災1ヶ月後くらいに床上浸水が大幅減少し,全壊,半壊が大幅に増加する傾向が一般的.このあたりは3月に出した論文に詳述した.
 
牛山素行:日本の風水害人的被害の経年変化に関する基礎的研究,土木学会論文集B1(水工学),Vol.73,No.4,pp.I_1369-I_1374,2017.
 
したがって,見た目で明らかに大きく壊れているという意味での「全壊」家屋数は,災害発生から1ヶ月以内くらいの数字がそれに近いと考えて言い,というか実際に見ていてもそういう印象がある.これは別に批判しているのではなくて,むしろ被災した側に立った対応で,悪いことではない.
 
今回の被害について,たとえば災害約10日後の7月15日時点の消防庁資料では福岡県の「全壊」は87棟.手元の資料では今回と類似した狭い範囲の豪雨だった2014年広島では災害9日後の「全壊」が24棟.こうしてみると,今回は「明らかな全壊」が多いような気がする.

2017/7/15-16朝倉市・東峰村付近現地踏査雑感

福岡県東峰村宝珠山.位置図→  https://goo.gl/UiKihx 2017年7月15日踏査.日田彦山線筑前岩屋駅のすぐ北(というより場内)の土砂災害現場.土石流と言っていいだろう.谷の上流方で少なくとも2世帯分が基礎もろとも流失,写真手前左側の合流部対岸側で1世帯が基礎のみ残して流失.こうした典型的な土石流災害現場も少なくない.

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朝倉市杷木星丸地区.位置図→ https://goo.gl/NsWvjV 2017年7月16日踏査.山地河川洪水により,この写真の範囲周辺だけで住家が少なくとも14世帯分流失.洪水によるこれだけの住家流失は珍しく,例えば平野部での堤防決壊に伴う洪水ではあるが,2015年常総市のケースでは全部で9世帯.山地河川洪水で集中的な被害が生じた2016年台風10号による岩手県岩泉町安家地区では11世帯.両事例とも,他には集中的な流失地区は見られなかったが,2017年7月九州北部豪雨では,こうした集中的な流失が1地区ではないことが特徴.

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2017年7月21日 (金)

朝倉市・日田市周辺の流失家屋の判読範囲を拡大・人的被害の序報

これまでに国土地理院が公開している空中写真 https://goo.gl/r9qEg1 から,今回の九州北部での豪雨によるの家屋の流失,倒壊状況を判読してきた.最新報は下記.
 
朝倉市・日田市付近の流失家屋等の写真判読(洪水・土砂を再判読)
 
あらたに判読範囲を拡大し,下記流域を判読した.
 
朝倉市
 赤谷川(小河内川,乙石川を含む),北川(道目木川を含む),寒水川,白木谷川,奈良ヶ谷川,妙見川,黒川,疣目川
日田市
 大肥川,小野川
東峰村
 大肥川
 
判読結果が下図である.計114箇所の流失家屋が読み取れた.比較が難しいが2014年広島災害では現地確認分や人的被害状況不詳分も含め56箇所だったことを考えると相当多い.

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支流域の判読が増えた結果,「洪水or土砂」が増えているが,「土砂」はやはり多くない.明白な土石流・崖崩れが中心というよりは,山地河川洪水に近い被害形態が中心という印象は変わらない.
 
人的被害についてはまだ把握できていないことが多いが,18日時点で推定できた発生場所(2/3くらいの箇所)は下図の通り.人的被害の数は決して少なくないが,流失家屋の箇所数の割には多くない印象もある.あるいは積極的な避難などがあったのかもしれないが,このあたりの背景はまだなんとも言えない.

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2017年7月13日 (木)

朝倉市・日田市付近の流失家屋等の写真判読(洪水・土砂を再判読)

7月11日現在で国土地理院が公開している空中写真 https://goo.gl/r9qEg1 から,今回の九州北部での豪雨による
 
朝倉市 赤谷川流域,北川流域,妙見川流域,黒川流域,疣目川流域
日田市 大肥川流域,小野川流域
東峰村 大肥川流域
 
の家屋の流失,倒壊状況を判読した.
 
朝倉市・日田市付近の流失家屋等の写真判読
 
その後,家屋等の流失に至った原因外力(洪水,土砂)について,あらためて判読を行った.上記ページと一部記述が重複するが,以下に結果を掲示する.
 
ここで流失,倒壊とは,
 
牛山素行・横幕早季:2014年8月広島豪雨による犠牲者の特徴,自然災害科学,Vol.34,特別号,pp.47-59,2015
 
で定義した「犠牲者が生じ得るような激しい外力が作用した」家屋である.具体的には以下のいずれかを満たすものである.
  • a)基礎より上の部分,または基礎も含めて完全に流失(建っていた場所からほかの場所に移動)し,どこにも建物の形状が確認できない
  • b)基礎より上の部分,または基礎も含めて完全に流失したが,流失先に建物の原型を一部でも残している
  • c)建っていた場所から移動はしていないが,建物の5割以上が原形をとどめず倒伏している
  • d)建っていた場所に建物の原形はとどめているが,建物内は土砂でほぼ満たされている
利用資料は,国土地理院が7月11日現在で公表している航空写真とゼンリン住宅地図である.災害前後の航空写真を比較し,上記a(以下では「流失」という)またはb(「変形」という)と読み取れる家屋を判読した.なお現時点では立体視は行っていない.判読対象家屋は,住宅地図で人名,事業所名,地番のいずれかが書かれている建物とした.同一世帯内の複数の建物が被害を受けていた場合は1と数えた.つまり「棟数」ではなく,箇所数あるいは世帯数である.非住家は対象としていない.
 
判読範囲は下記である.

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これらの判読範囲で確認されたのは「流失」44箇所,「変形」11箇所の計55箇所だった.写真からの判断であり,見落としや,課題評価が大いに存在する可能性がある.また,撮影範囲以外のことは当然含まれない.なお,妙見川流域,疣目川流域,大肥川流域では1箇所も判読されなかった.
 
2014年8月広島豪雨災害時に,人的被害の発生した地区で同様な調査を行った際,「流失」「変形」等と判定されたのは47箇所であり,今回判読した範囲内だけでこれを超過している.流失家屋がかなり多いように思われる.
 
原因外力は,現地調査をしても,人によって判断が分かれる所であり,あまり厳密な議論はできないが,写真の被害状況や地形図,標高から,以下の方針で判読・分類を行った.
  • 山地河川洪水起因の可能性が高い(以下「洪水」):家屋を破壊したと思われる流れの勾配が,流失・変形家屋の直上流側で約3度未満
  • 洪水と土砂の中間的なもの(「洪水or土砂」):同,勾配が約3度~約10度
  • 土石流・崖崩れ起因の可能性が高い(「土砂」):同,勾配が約10度以上
閾値を3度及び10度としたのは,一般的に土石流は勾配10度程度で停止(堆積)しはじめ,3度以下には到達しないことが知られているためである.崖崩れはさらに急勾配の箇所で発生することが一般的である.
 
なお,筆者は「洪水」と「土砂」を今後厳密に分類することは目的としていない.今後,筆者が継続的に実施している風水害時の人的被害発生状況を調査する際に,各人的被害の原因外力を分類し,ソフト対策上の知見を得るために概略的な分類として行っているものである.
 
判読結果が下図である.箇所数は,「洪水」26箇所,「洪水or土砂」17箇所,「土砂」12箇所だった.なお7月11日の判読では,上記「土石流・崖崩れ起因の可能性が高い」もののみを「土砂」と判読したため,今回の判読では「洪水」の箇所数が減少している.あくまでも空中写真によるざっくりとした判読ではあるが,主に山地河川洪水による流失・変形と思われた.無論,洪水と言っても水だけではなく,上流側で発生した崖崩れ,土石流により生産された土砂と共に流下したものである.昨年の岩手県岩泉町,2011年台風12号の那智川流域の災害などと類似している.

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「洪水」「洪水or土砂」と判読された箇所で,洪水浸水想定区域となっていた箇所は存在しなかったが,その多くは地形分類図から「低地(谷底平野)」と判読されたことは昨日挙げている.
 
朝倉市・日田市の流失家屋等の位置と地形の関係を判読
 
また,本日判読した「土砂」12箇所はいずれも,土石流危険渓流,急傾斜地崩壊危険箇所,土砂災害警戒区域(土石流)のいずれかの範囲内もしくは範囲近傍(約30m以内)に該当した.基本的に,地形的に危険性の考えられる箇所で被害が生じていることは,これまで繰り返し指摘しているとおりである.
上記の図の作成は,埼玉大学教育学部谷謙二研究室「Google Maps APIv3を使ったジオコーディングと地図化」を用いている.
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