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2018年4月12日 (木)

土砂災害「前兆」について思うこと -中津市耶馬溪町の地すべりから-

今回の耶馬溪の現象は,斜面崩壊と地すべりの中間的なあたりに位置する現象なのかな,という印象.メカニズム的な分類の話は専門家にやっていただければ良いとして,事前に予見できたか,という話に関心が持たれるけど,これは難しいところか.

土砂災害にいわゆる「前兆」的な現象が見られることはよく言われていて,その現象自体は私も否定しない.ただ,その多くは「すでにどこかが壊れはじめている」ことに起因するもので,特に大雨などで事態が急速に進行中の場合は,リードタイムは秒単位しか期待できない.

しかし「前兆」という言葉を使ってしまうと,あたかも前兆を待って行動開始すれば良いような印象が持たれてしまい,それでは手遅れになることが懸念される.はなはだしきは「大雨の中,身支度をして前兆がないか見回った」などという話すら聞くが,本末転倒.

このため,大雨に起因する土砂災害の「前兆」については頼らないでくれ,とよく言っている.「前兆」を捉えたいなら,もっと基本に立ち返って,雨の降り方や川の水位などに気を配って欲しいと.

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一方,地すべりのような,緩慢に進行する土砂移動現象の「前兆」に気をつけることは私も否定しない.地すべり災害では,亀裂などの「前兆」が覚知されて監視が始まり,やがて大きな土砂移動に繋がるというケースが多く,このため人的被害にも繋がりにくいと言っていい.近いところでは,2013年4月の浜松市天竜区春野町での地すべりも,地表の亀裂が覚知されて監視が始まった.

P10006102013/4/23 浜松市天竜区春野町

浜松市春野町の地すべり現地踏査(2013/4/23)

https://disaster-i.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/2013423-3185.html

今回の耶馬溪での「前兆」が具体的にどうなのか,「今になって思えば」というレベルなのかもしれないし,よくわからない.地すべり常習地では,「亀裂→地すべり」という知識が地域でもよく知られていて,覚知されやすいということがあるかもしれないが,耶馬溪付近では地すべり常習地とまでは言えない状況で,あまり注意が向かなかったのかもしれない.いずれにせよ,よくわからない.

ただ,「まさかここでこんなことが」という現象ではないことは確かだと思う.このような現象が繰り返されて,この地域の地形が形成されてきたのだから.

「地すべりの動画」として,2004年8月の奈良県大塔村宇井のものがよく挙げられるけど,確かに形態的には地すべりかもしれないけど,急速に崩れ落ちる映像なので,典型的な地すべりとしてはどうかなあ,と思ってる.今回の耶馬溪はこれに近いのかな.www.kkr.mlit.go.jp/bousai/taiou/k…

「典型的な地すべりの動く様子」としては,1985年長野市地附山の地すべりの方がいいような気がしている.というか,これは私の「地すべり観」か.この映像は残っていないのだと思っていたら,変わったところにあることを知った.www2.nhk.or.jp/archives/tv60b…

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