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2018年7月 8日 (日)

平成30(2018)年7月豪雨は「広域・多量・長時間」の大雨の可能性

 今回の平成30(2018)年7月豪雨は,非常に広い範囲で,多量の降水が,長時間にわたり生じたことが大きな特徴と言える.それが具体的にどの程度であったのかを端的に示す一般的な指標が見当たらない.そこでここでは,水資源について議論する際などに用いられる「降水総量」,すなわち,降水量に面積をかけて体積で表現する指標を用いて,過去の豪雨との比較を試みた.
 
 気象庁のAMeDAS観測所は全国に約1300箇所あり,山間部に設置されていないなどのかたよりはあるものの,なるべく均等になるよう配置されており,その空間密度は平均的には17km×17km=289平方kmとされている.そこでここでは,1つのAMeDAS観測所が,面積289平方kmの空間を代表する値と仮定し,全国のAMeDAS観測所で観測された降水量の合計値に289平方kmをかけ,降水総量(単位は立方メートルに換算)を求めることとした.
 
 用いたデータは,当方が従来から計算してある全国AMeDAS観測所の,1980年以降の毎日の24時(00時)の24,48,72時間降水量を用いた.なお,AMeDAS観測所数は約1300箇所で大きく変化はしていないが,時期によって数十箇所規模で増減する.また,値の大きくなりやすい山間部の観測所が2000年代以降一掃されたりしている.前述のように,完全に均一に配置されているものではないという問題もある.これらの影響は考えられるが,今回はあくまでも概算値なのでこれらについては特に考慮しないこととした.

24

 24時間降水量の降水総量をみると,期間中で最も多かったのは2004年10月20日24時の,約351億立方メートルで,今回多かった2018年7月6日24時は221億立方メートルと,既往3位未満だった.

48

 48時間降水量の降水総量をみると,期間中で最も多かったのはやはり2004年10月20日24時の,約462億立方メートルで,今回多かった2018年7月6日24時は約413億立方メートルと,やはり既往3位未満だった.

72

 72時間降水量の降水総量では,期間中で最も多かったのは2011年9月21日24時の,約491億立方メートルだった.一方今回多かった2018年7月7日24時は約553億立方メートルとなり,既往最大値を大きく上回った.
 
 2004年10月20日は,広域で大雨が降り,広い範囲で被害が出,全国で死者行方不明者98人が生じた2004年台風23号の通過日である.2011年9月21日は九州,四国の「いつもからよく降るところでたくさん降った」パターンで,被害はあったが,極端に大きくはなかった.
 
 計算結果は未精査で,あくまでも緊急に概略値として計算したものだが,今回の豪雨が最近約40年中でも特に「広域,多量,長時間の大雨」であった可能性は高いものと思われる.
 
※(2018/7/9修正)過去データと今回豪雨とで、日界(何時を一日の区切りとするか)の定義を変えてしまっていたことに気が付きました。今回事例で「7月7日」としていたものは「7月6日」の誤り、「7月8日」は「7月7日」の誤りです。図と本文は訂正済みです。

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