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2018年8月19日 (日)

8月17~18日岡山県・広島県内現地踏査雑感

 本日8月17日は平成30年7月豪雨関係の調査で岡山県倉敷市真備地区を踏査.これで今回の豪雨関係調査は第5次となるが,まだ全然見るべき場所が見れていない.本当に被害範囲が広く,多い.
 
 倉敷市真備地区で最も激しい家屋被害が生じたのはおそらく真備町有井地区と言っていいだろう.写真は末政川の破堤箇所,ここに来る機会がなかなか作れず,1ヶ月以上経っての訪問となった.家屋が流失した箇所はすでに更地,と言うか工事用の道になっている.洪水流が作った流路跡が若干見える.

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 破堤箇所をまず見た後は,人的被害発生箇所二十数カ所を踏査.本日見た中で流失・倒壊した場所は末政川破堤箇所付近の一箇所だけで,あとはすべて建物は形としては現存し(既に除却したところもあったが),屋内で遭難した可能性が高いと思われる箇所がほとんど.こういう調査はちょっと珍しい.
 
 土砂災害や津波災害では,家屋が大きく損壊したところで主に人的被害が生じる.洪水も基本的には同様だけど,深い浸水が生じると建物自体は大きく損壊しなくても,人の被害がまとまって出てしまいうることが,本災害で顕在化したことを改めて感じた.
 
 なお,深い浸水が生じた場合,外観上の大きな損壊が無くても,継続使用することができなくて結果的に家屋を解体せざるを得なくなる場合もあるので,建物が残っているから被害が軽微だと言う意図はない.
 
 本日見た人的被害発生の可能性がある場所は,現地での簡単な計測で見る限りいずれも浸水深は約3m以上といってよさそうで,5m程度のところもあった.ただ,同程度の浸水でも人的被害が出ていない家屋の方が数としては多いわけで,なかなか話は単純では無い.
 
 また,今日見た範囲では平屋での人的被害例が目立つかな,とも思ったけど,2階建てでの被害も少ないわけでは無く,やはりそもそも人的被害の出ていない平屋も数としては多いわけで単純には言えない.
 当然ではあるけど,人的被害に至るのは様々な要因が組み合わさっての結果だと思われ,特定の要因だけを持って「これが危ない」「これで被害がゼロに」のように単純化して捉えるわけにはいかないな,とあらためて思った.
 
 翌8月18日は,福山市,三原市付近を現地踏査.写真は福山市駅家町でため池が決壊し,人的被害が生じた現場付近.報じられている範囲では,ため池上流側の町内会グラウンドが崩壊し,それに伴ってため池が決壊したらしい.豪雨でため池の水位が上昇し,というだけではないようだ.

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 地理院地図で付近を見るとこのようになる.確かにグラウンドらしきものがある.地形図,また現地で見ても,おそらく谷を埋めて作ったグラウンドのように思われる.
 
 ちなみに,「谷埋め盛土が危険」みたいにとられることをいうと,そこだけに食いついて利用しようとする人が居るので,そんなことは絶対に言いません.そもそも専門ではないので,危険だとかなんだとかといったコメントはできません.
 
 こちらは三原市本郷町.ここももっと早く来たかったが.沼田川の氾濫により広範囲に浸水が生じ,地区内で3人が洪水により死亡(家屋流失では無く屋内での浸水).国交省資料を見ると,沼田川本川は越水だったが,支川では破堤もあったようだ.

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 三原市本郷町は,倉敷市真備町ほど広範囲ではないが,計画規模で想定浸水深5m以上があるところ.人的被害はいずれも浸水想定区域内で発生した(想定浸水深はいろいろ).国土交通省「重ねるハザードマップ」より.
 
 なお,三原市本郷町の洪水は,倉敷市真備町に比べれば浸水の深さ,範囲ともに大きくはない(相対的な話であり,たいした被害ではないと言う意図はない).人的被害発生箇所の実質的な浸水深は2~3mほどだった.住家の流失も見た範囲では確認できない(空中写真未精査).この規模でも条件次第では洪水による人的被害が生じうる,という例.このようなケースは過去に例が無いわけではないが,毎年多数発生というわけでもない.

2018年8月10日 (金)

8月8日広島県内現地踏査雑感

8月8日,広島市周辺を現地踏査.写真は坂町小屋浦地区.死者・行方不明者16人と,7月豪雨の土砂中心の被災地で最も集中的な人的被害が発生.低地側(写真下)では(土砂混じりの)洪水による被害もみられた印象. 坂町小屋浦地区は,重ねるハザードマップを見ると,至る所土砂災害危険箇所という地区.

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同じく8月8日の現地踏査から.今回の豪雨では,洪水,土砂災害時に見られる様々な被害形態が各所で見られている.写真は広島市安芸区畑賀で,河川沿いの道路の路肩が崩壊した箇所.この付近で,車が転落して2人が行方不明となっている模様.この車は,家族で避難途中だったらしい.

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8月8日の現地踏査からもう1枚.広島市安芸区矢野町の,県道34号線矢野峠付近.この付近(広い意味で)で通行中の車がかなり洪水・土砂に巻き込まれた模様. 7日のRCCの番組で,この地点よりもっと麓側で洪水に巻き込まれ,なんとか脱出した車のドライブレコーダ動画を見た.前ツイートのような路肩崩落だけが要因ではなく,多量の洪水・土砂流出が通行中の車に被害をもたらしたのかもしれないと思った.通行中の多くの車が洪水,土砂に巻き込まれるというのは,夕方~夜にかけての豪雨災害の怖さの一つかと思われる.避難中というわけでなく,普段の通勤,用務途中であったこともさらに恐ろしさを感じる.まさに,1982長崎豪雨時の文献で見た光景だと思った.

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2018年8月 5日 (日)

平成30年7月豪雨による人的被害の特徴・発生時間帯を追記

 平成30年7月豪雨による人的被害の特徴,発生時間帯についてのグラフを追記する.
 
 本事例は夜間の比率が高いが,今回は激しい雨が夜間に発生したことを意味するもので,「夜間だから被害が大きくなった」とは一概に言えない.1999-2017では,犠牲者発生時間帯は昼・夜ほぼ半々であり,「夜には夜の,昼には昼の危険がある」事に注意が必要.「夜だから犠牲者が出た」のか「今回の豪雨は夜間に発生したので夜間の犠牲者が出た」のかという議論は,これまでも考えてきたけどなかなか単純には語れない.

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 たとえば,2017年九州北部豪雨は,豪雨のピークが,「昼過ぎ」~「夜のはじめ頃」だったので,時間帯別犠牲者数のグラフはこんな感じになる.2016年台風12号の岩手県岩泉町の災害も午後~「夜のはじめ頃」だった.決して「夜の豪雨だけで被害が大きくなる」訳ではない.

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 ‏今回の「教訓」から,「わかりやすい」フレーズとして「夜が怖い」ばかりが強調されることを懸念する.今回の豪雨はむしろ時間帯が長くて,広島や岡山では「昼過ぎ」~翌日「朝」までと言ってもいいくらい.夕方前後の,人が多く動いている時間帯の災害でもあったことが覆い隠されてしまってはならないと思う.

2018年8月 4日 (土)

平成30年7月豪雨時の災害情報に関するアンケート(8/4加筆修正版)」について

 8月3日に日本気象協会で行われた「「平成30年7月豪雨」 現地調査速報会」で発表した際に配付した資料のうち,2点目の「平成30年7月豪雨時の災害情報に関するアンケート(8/4加筆修正版)」を公開します.
 
 なお,この調査は,大雨特別警報発表市町村の一部在住者が対象のものです.自宅外への避難の実施状況も質問していますが,対応行動の一つとして参考のため聞いているもので,各回答者の所在地が明確には分からないことなどから,ここから「避難率が低い」といった議論はできません.
 
 主な内容から.いくつかの報道でも紹介された,大雨特別警報の意味が適切に認識されていない可能性,という話のもとはこのグラフ.大雨特別警報という言葉はほとんどに人が知っていると思われるけど,深刻そうな意味を選択してくれる人は5割くらい,という結果.

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 「大雨特別警報が発表されたことを最初に知ったのはいつ頃でしたか」の回答も興味深い.実際にはまだ発表されていない「7月5日」の回答が3割前後.なにか他の情報と混同されているのかもしれない.

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 ネット回りの人が関心を持つかもな結果.「大雨特別警報が発表されたことを一番最初に知ったメディア」はテレビ4割弱,ネット系プッシュ型メディアが4~5割.2013年の類似調査に比べテレビが減り,ネット系プッシュ型が増えた模様.

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「平成30(2018)年7月豪雨による人的被害等についての調査(速報)」について

 8月3日に日本気象協会で行われた「「平成30年7月豪雨」 現地調査速報会」で発表した際に配付した資料に,一部加筆修正したものを公表します.当日は2件話題提供をしました.まず「平成30(2018)年7月豪雨による人的被害等についての調査(速報)(8/4加筆修正版)」
 
 資料にもしつこく書いているけど,あくまでも現時点で得られた情報による推定値.メディアでは「~とわかった」と書かれてしまうけど(それは「文法」なのでしょうがないと思っている),決して確定的で絶対に正しい数字・分類・見解ではないことは重ねて強調しておきたい.また,以下では死者及び行方不明者を総称として「犠牲者」と表記する.
 
 主な内容から.原因外力別では土砂災害によるものが約半数.これはこれまでの風水害と同傾向.一方で,洪水によるものが4割弱で,これはかなり高い比率となる.倉敷市の被害が主だが,他にも少なくない数.

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 危険箇所と犠牲者発生場所の関係を見ると,「土砂」犠牲者は9割が土砂災害危険箇所及びその近傍で遭難したとみられる.これもこれまでの風水害と同傾向.

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 「洪水」犠牲者は浸水想定区域外で遭難のケースが従来は多かったが,今回は6割以上が範囲内と推定.地形で見れば,「洪水」犠牲者の9割以上が(洪水の可能性がある地形分類である)低地で遭難,これは従来の風水害と同傾向.

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 なお,当方調査結果のうち「洪水」犠牲者と浸水想定区域の関係「だけ」を切り取って,風水害全般についてハザードマップが役に立たないかのように主張することは,当方の意図に全く反するものである事は強く主張しておきます.

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