土砂災害危険箇所等「範囲外」での犠牲者発生
群馬県富岡市内匠で土砂災害により人的被害が生じた現場は,土砂災害警戒区域等ではなく,避難勧告が出ていなかったとのこと.
以下は2019年10月16日22時13分のNHK報道を引用.
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台風19号で、群馬県富岡市の内匠地区では裏山の土砂が崩れて住宅8棟に流れ込み、3人が死亡しました。富岡市はこの地区に避難勧告を出しておらず、今後、対応に問題がなかったか、検証することにしています。 <中略> 県などは12日午前9時50分に、富岡市に土砂災害警戒情報を発令し、富岡市は正午すぎから、土砂災害警戒区域や浸水想定区域などに、避難指示や避難勧告を出しましたが、土砂崩れがあった内匠地区はこれらの区域に含まれていなかったため、避難勧告などは出されませんでした。この地区は、緩やかな傾斜地で土砂災害警戒区域に指定されるような急な斜面ではありませんでしたが、今回の台風では土砂崩れが起き、この地区に住む3人が死亡しました。
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富岡市の避難勧告の出し方は標準的なもので,大きな問題があるとは思えない.仮にこの地区に避難勧告を出すと判断するなら,「市内全世帯避難勧告」とでもするしかないのではなかろうか.
群馬県富岡市内匠の土砂災害現場というのは多分ここ.たしかに,土砂災害警戒区域でも,土砂災害危険箇所でもない.重ねるハザードマップ
土砂災害犠牲者のほとんどは土砂災害危険箇所付近で遭難している,というのは私の調査から繰り返し指摘しているところ.しかし,相手は自然なので完全とはいかず,危険箇所の範囲外での遭難者が13%ほど存在する.
この土砂災害危険箇所「範囲外」犠牲者について,現在投稿中の論文で分類したところ,うち32人は土砂災害危険箇所・土砂災害警戒区域のいずれについても「範囲外」と判読された.その32人の内訳を分類すると,
①緩斜面・低い斜面(16人)
②高速道路の法面(7人)
③人家のない道路付近(6人)
④分類困難(3人)
となった.
④は例外中の例外.②と③はいずれも土砂災害警戒区域の指定対象外なので少し話が別.難しいのは①緩斜面・低い谷,のケース.こちらは現在の技術では危険箇所としての抽出がなかなか難しいと考えられる.これはその一例で,土石流のイエローゾーンになりそうな気もするが,谷が小さいため対象外となったのかもしれない.
「緩斜面・低い谷」犠牲者は土砂災害犠牲者478人中16人,3%ほど.こうした難しいケースを予測すること,ましてや技術的バックボーンを持たない自治体が予測して避難を呼びかけるのは,かなり難しいのではなかろうか.
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