洪水ハザードマップの補完としての地形分類図とその問題
台風19号災害で,洪水関連の犠牲者の一部が,洪水浸水想定区域の範囲外で発生したのでは,という見方がある.この見方については現時点ではまだなんとも言えないけど,こうしたケースがこれまでの災害で少なくないことはたびたび指摘している.
洪水ハザードマップを保管する情報として有力だと考えられるのが地形分類図だと思うのだけど,地形分類図はいろいろ面倒くさい.現状でまあ普通の人にも勧められそうなのは,地理院地図の「地形分類(自然地形)」かと思うけど,これは整備範囲がハザードマップのありそうなところに限定されていて,洪水ハザードマップが未整備のことがよくある山地中小河川がカバーされない.
本州以南のおおむね全国を縮尺1:50000でカバーしているのが,重ねるハザードマップで見られる「土地分類基本調査(地形分類図)」なんだけど,これが強烈で,県によって凡例は違うわ,用語は違うわ,図幅の境界で整合しないわと.さまざまな歴史的経緯によって作られてきた図ということもあって,仕方がないことだ,と受け止めているけど.でもこれが出てきたときは本当に感動した.地理院,水資源局でこの件推進したみなさんには本当に心から拍手を送りたい.
地形分類図は,その種類によって同じ地域についても記述内容が全然違うなんて事も珍しくなくて.もうどう説明していったらいいかわからない,というのが非力な私の感想.以下はその一例.
水関連の犠牲者で,浸水想定区域内で遭難した人は4割程度にとどまるけど,地形で見ると低地での遭難者が9割以上.地形分類図的情報はある意味飛躍的に危険情報としての精度を高められるとも言っていいだろうから,なんとか活用したいところではあるけど.
1:50000の地形分類図だと,境界部とか小さな谷とかでは判別が難しいケースもあって,この分類ではそういうところは自分自身で判読したりしているので,そう簡単に使えるとは広く言えないところが弱いけど.なお,この件については現在投稿中の論文で詳しく記述.
こうしたことがあるので,これらの図を単にデジタル化して,広くいろいろなサイトの情報と重ねてしまうというのは,あまりにも危険で,やるべき,と声高には言えない気がしている.
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