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2019年11月13日 (水)

2019台風19号による人的被害についての調査(速報 2019年11月12日版)を公開します

※この資料の加筆版を公開しました.(2019/12/30)

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当方ではこれまで,風水害犠牲者の発生状況についての調査を継続的に行っています.

https://disaster-i.cocolog-nifty.com/blog/2019/10/post-b96593.html

今回の台風19号についても同様な調査を実施中です.調査自体はまだ進行中ですが,災害発生から1ヶ月となりますので,現時点までの調査結果を簡単にとりまとめたので公表します.

主な要点は以下の通りです.

  • 人的被害の概要
    • 犠牲者数は近年の事例では2011年台風12号,2004年台風23号と同程度
    • 家屋被害は1999年以降で最大規模だが,家屋被害(社会に加わった外力の規模)に対し人的被害が少なかった可能性も
  • 犠牲者発生の原因外力
    • 「洪水」「河川」の比率が,近年の風水害としてはかなり高い
  • 犠牲者発生場所
    • 近年の風水害に比べ「屋外」犠牲者の比率がやや高い
    • 「屋外」犠牲者中では「車内」での犠牲者の比率がかなり高い
    • だからといって「車は危険だから避難は徒歩で」ではない.人も車も簡単に流されてしまうから,風雨が激しいときの屋外行動をなるべく避けることが重要
  • 避難行動
    • 「避難行動あり」犠牲者率は近年の他の風水害と同程度
  • 災害危険箇所と犠牲者発生場所
    • 「土砂」犠牲者数は相対的に少なく,傾向についてはなんとも言えない
    • 「洪水」「河川」犠牲者の5割強が浸水想定区域内.近年の風水害よりはむしろ範囲内が多い
    • 「洪水」「河川」犠牲者のほぼ全員が地形的に洪水の可能性がある「低地」で発生.近年の他の風水害と同傾向
  • 地形分類図の活用を
    • 浸水想定区域の整備には時間がかかる.すでにある地形分類図が,「洪水」「河川」犠牲者発生位置をほぼ的中させている.情報としての課題は多いが,積極的活用(関連情報整備,読み解ける人材の育成等)を図れないか

2019台風19号による人的被害についての調査(速報 2019年11月12日版)

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2019年11月12日 (火)

11月5日栃木県内現地踏査雑感

11月5日,栃木県内現地踏査.こちらは鹿沼市草久で,県道の陥没部分に車が転落し,1人が犠牲となった現場.道路付近は浸水したようには見られない.河川沿いの道路だが,河川の護岸が損壊しているわけではない.よくある形態ではなく,ちょっと私にはメカニズムが分からない.

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鹿沼市奈佐原町.この付近の河川内の車の中で1人の犠牲者が確認されている.位置はよく分からないが,上流側のどこかで川に転落したのかと思われる.自宅から会社の様子を見に行ったらしいとの報道もあり,これは時々見られる被害形態.

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栃木市薗部町.遭難場所は分からないが,この付近では,避難途中(徒歩とみられる)に洪水に流された1人が水路内で発見され死亡が確認された.付近の永野川には破堤も見られ,ところにより1m前後の浸水がみられた.破堤箇所付近でも流失家屋は確認できない.

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栃木県足利市寺岡町.避難途中の車が流され,1人の犠牲者が生じた地点付近.旗川と出流川の間に位置するが,両川が上流の各所で越流し,平地部分の広い範囲を水が流れていた状況と思われる.出流川に向かってやや低くなっており,浸水深が深くなったものかもしれない.
付近では一部で家屋への浸水が見られるが,流失したと思われる家屋は見られなかった.避難途中の遭難であったというのも痛ましいところ.

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この付近は浸水想定区域(想定最大)はギリギリ範囲内くらい,計画規模では範囲外.[重ねるハザードマップ]

地形的には扇状地で,旧河道とも読めるようだ.洪水の影響を受けうるところ.[重ねるハザードマップ]

 

2019年11月 3日 (日)

11月1日宮城・福島県内現地踏査

11月1日,宮城県,福島県の台風19号被災地を現地調査.宮城県丸森町千刈場.阿武隈川,支流・内川の合流部付近で,1人の人的被害が発生.付近の浸水深は道路面から1.4m前後.流失家屋は見られない.

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浸水想定区域(計画規模)であり,想定浸水深も概ね想定に近い規模だろうか.[重ねるハザードマップ]

付近は氾濫平野,自然堤防が混在する地域で,地形的にも洪水の影響は受けうる地域.[重ねるハザードマップ]

11月1日,宮城県丸森町竹谷.阿武隈川支流新川の近く.付近の2箇所で計2人の人的被害が発生.この写真付近の浸水深は道路面から2.0m前後.この地点の東側水田付近では3m以上のところも.流失家屋は見られない.

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この付近は,浸水想定区域(計画規模),浸水想定区域(想定最大)ともに範囲外となる.[重ねるハザードマップ]

しかし,地形で見ると氾濫平野で,洪水の影響は受けうる地域.「洪水に見舞われるはずもない場所」ではない.[重ねるハザードマップ]

この話についてはこちらも
https://disaster-i.cocolog-nifty.com/blog/2019/10/post-da6534.html


11月1日,宮城県丸森町上林西.阿武隈川支流五福谷川がこの地点の西側で大きく流路を変えて流下し,県道を洪水流や土砂が覆った.通行中の車で1人の人的被害が発生.

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この付近は,浸水想定区域(計画規模),浸水想定区域(想定最大)ともに範囲外となる.しかし,地形で見ると旧河道及び氾濫平野で,洪水の影響は受けうる地域.現在の五福谷川は谷を抜けたところで北側に流下しているが,旧河道の位置に沿って東側に流下したと思われる.[重ねるハザードマップ]

五福谷川に沿ってやや上流側に移動したところ.山地河川洪水の様相が見られ,新たな流路や,自然堤防の形成が見られるか.

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ただし,この付近での流失家屋は意外に限定的と思われる.少なくとも下記の写真付近には流失した住家はないようで,写真南西側,川の上流側には数世帯程度流失家屋が見られる.[地理院地図]

11月1日,福島県いわき市平赤井諸荷.夏井川の近く.1人の人的被害が発生.付近の浸水深は道路面から2.2m前後.流失家屋は見られない.

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付近は,重ねるハザードマップでは浸水想定区域(計画規模)のいずれにもなっていない.土地分類基本調査では自然堤防で,地形的にも洪水の影響は受けうる地域.[重ねるハザードマップ]

福島県いわき市平平窪.夏井川の近く.付近ではそれぞれ別の場所で4人の人的被害が発生.付近の浸水深は道路面から2.5m前後.嵩上げしている家屋もみられ,そうした家屋での浸水深はやや浅い.流失家屋は見られない.

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付近は,重ねるハザードマップでは浸水想定区域(計画規模)のいずれにもなっていない.土地分類基本調査では自然堤防と谷底平野が混在する地域で,地形的にも洪水の影響は受けうる地域.[重ねるハザードマップ]

 

10月31日福島県内現地踏査雑感

10月31日,福島県内の台風19号被災地を現地調査.福島県須賀川市館取町.阿武隈川支流釈迦堂川の近くで,少なくとも2人の人的被害が発生.付近の浸水深は道路面から3.0m前後で,1階天井に達する程度.流失した家屋は見られない.

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付近は氾濫平野,自然堤防,旧河道が混在する地域で,地形的にも洪水の影響は受けうる地域.[地理院地図]

浸水想定区域(計画規模)であり,想定浸水深も概ね想定に近い規模だろうか.[重ねるハザードマップ]

福島県郡山市大町二丁目.阿武隈川支流逢瀬川近くで,少なくとも1人の人的被害が発生.こちらも浸水深は3m前後で,1階天井に達する程度.流失した家屋は見られない.

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付近の浸水したとみられる範囲は氾濫平野で,地形的にも洪水の影響は受けうる地域.[地理院地図]

浸水想定区域(計画規模)であり,浸水深は計画規模の想定浸水深よりは深く,想定最大と比べると想定の範囲内というところだろうか.[重ねるハザードマップ]

福島県本宮市本宮字南町裡.阿武隈川および支流安達太良川近くで,この地区では少なくとも3人の人的被害が発生.浸水深は3m弱.やや嵩上げした家屋も見られるが,1階床上から天井に近い程度の浸水.流失した家屋は見られない.

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付近の浸水したとみられる範囲は自然堤防,氾濫平野,旧河道が混在し,地形的にも洪水の影響は受けうる地域.[地理院地図]

浸水想定区域(計画規模)であり,想定浸水深も概ね想定に近い規模だろうか.[重ねるハザードマップ]

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